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世界の分断 「Think!」エキスパートが読み解く

日経電子版「Think!」は、各界のエキスパートが注目ニュースにひとこと解説を投稿する機能です。今回は、ロシア軍によるウクライナ侵攻から半年が過ぎた今、世界で起きている「分断」をテーマに主な投稿をまとめました。(投稿の引用部分はエキスパートの原文のままです)

「中立パワー」をThink!

そして3極に割れた世界 協調嫌がる「中立パワー」台頭(6月27日)
世界秩序の変化に、日本は最も鈍い主要国の1つだろう。侵略されたら米国に守ってもらえるという、際だった「特権」に包まれているからだ。

【川島真さんの投稿先進国が考えているほど、先進国の側に支持が集まらないということは大切な指摘。ただ、中露側も一枚岩でもないし、「陣営」と呼べるほどの全体のアクションもない。図表を見ると、人口などの数値から、中国がロシア支持ではなく、ロシア寄りに分類されていることがわかる。全体から見て中立は多くないように見えるが、「・・・寄り」も中立だとすると、中立は相当な勢力になる。中国はその広義の中立の側に一面でたち、他面でロシア寄りを表現するだろう。日本としては、こうした中立国、可能なら広義の中立国とどれだけきめ細やかに対話できるかも勝負になる。G7で唯一のアジアの国だからこそそうした役割が一層求められよう。

「対強権主義」をThink!

対強権主義、価値観超え結束 民主主義の影響力に陰り(6月30日)
バイデン米大統領が主要7カ国首脳会議(G7サミット)の初日から呼びかけたのは、民主主義国との連携で得られる果実と恩恵だった。

【細谷雄一さんの投稿「民主主義対権威主義の図式にはめ込むのは、終わりのない善悪の議論に足を突っ込む」というリ・シェンロン首相の発言に重みがあります。民主主義が世界の「マイノリティ」であり、フリーダムハウスの調査で過去10年以上続けて民主主義が後退しているという結果もあるなかで、昨年12月のバイデン大統領が主導した「民主主義サミット」のような「クラブ」の形成は、むしろ「グローバルサウス」での反発を招く可能性があります。むしろ、かつて米国外交官ケナンが冷戦初期に論じたように、民主主義の強靱性、魅力、美徳を、アメリカを中心とした諸国自らが実例で示し、権威主義体制よりも経済や技術でも優位にあることを示すことが重要です。

「オイルロンダリング」をThink!

ロシア原油に「洗浄」疑惑 インドで精製、欧米に輸出(7月14日)
ロシア産原油を石油製品に精製して輸出する「オイルロンダリング(原油洗浄)」の中継拠点としてインドの関与が浮上してきた。制裁で行き場を失ったロシア原油を大量に買い、ガソリンなどに精製して一部を欧米への輸出に回している。

【益尾知佐子さんの投稿国際政治におけるインドの立ち位置を、日本は再確認した方が良いと思います。日本では「インドは反中でロシアの武器が必要だからロシアを非難できない」という見方が一般的ですが、私がインド人たちと中国問題を議論してきた中で感じたのは、そんな単純なものではないということです。インドは西側が構築した西側に有利な国際秩序に深い疑問を持っています。アメリカがアフガンやシリア、さらにイランなどに行ってきた行動を暴挙だと思っています。ロシアがウクライナで行っている「悪」の程度は、その意味ではたいしたことない、というのが彼らの理解です。インドは八方美人外交を行っており、QUADはインドにとっては便宜的なものです。

「崩れた安保の国際秩序」をThink!

ウクライナ侵攻、崩れた安保の国際秩序とアジアの不穏(8月25日)
「停戦はなかなか難しい。長引く戦争になってしまうのではないか」。国連のグテレス事務総長は8日、広島訪問後の記者会見でウクライナ情勢について悲観的な見方を示した。

詫摩佳代さんの投稿】国連の機能不全がウクライナ戦争で注目を集めていますが、記事にもある通り、今に始まった話ではありません。むしろ世界政府でもなく、加盟国に対して何ら強制力をもたない国連にとっては当然の限界です。安全保障とは本来、グローバル、地域、国など多層的なものであり、国連の集団安全保障はその一部と捉えるべきです。国際社会の分断に伴い、グローバルなレベルでの機能は弱体の一途を辿り、一方、地域や有志といったサブレベルの取り組みが重要性を増すのは当然の成り行きです。日本に関しては、国際的な緊張をコントロールする努力と併せて、有志国間や国レベルの安全保障機能を強化する必要性が、いつになく増しているように感じます。

「インドの中立姿勢」をThink!

インド中立、やむを得ない ロシアと決別できぬ対中事情(5月16日)
日本と米国、オーストラリア、インドの首脳が5月下旬、東京で一堂に会する。「Quad(クアッド)」と呼ばれる枠組みだ。クアッドは中国をにらんで結束を強めてきたが、ここにきて暗雲が垂れこめている。

【今村卓さんの投稿クアッドにおけるインドと日米豪の共通点は、安全保障上の中国との競争関係と民主主義に限られると思います。しかも、インドと日米豪の民主主義の共通点は政治体制に限られ、民主主義に込める価値観までは共有していないでしょう。バイデン大統領の唱える「民主主義と専制主義の対立」に日豪は同調しますが、インドは距離を置いていると思います。またインドは実利主義と自国最優先。曖昧な価値観などでの協調に応じる国でないことは、日本もWTOやRCEPなどインドが参加する通商交渉の場で見せられてきたはず。クアッドでも日米豪はインドへの幻想を捨て実利で引き付ける工夫が必要、経済連携への拡大など過度な期待は避けるべきです。


Think!
平日のニュースに投稿がつく「Think!」。これまでの投稿一覧と、エキスパートのみなさんのご紹介は次のページから。

【投稿一覧】
https://r.nikkei.com/topics/topic_expert_EVP00000
【エキスパート紹介】
https://www.nikkei.com/think-all-experts

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