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ウクライナ侵攻 「Think!」エキスパートが読み解く

日経電子版「Think!」は、各界のエキスパートが注目ニュースにひとこと解説を投稿する機能です。今回は、ロシア軍による侵攻から1週間が過ぎたウクライナ情勢に関する主な投稿をまとめました。(投稿の引用部分はエキスパートの原文のままです)

ロシア軍、首都中心に侵入 停戦交渉打ち切り(2月26日)
ロシアとウクライナ軍との戦闘は26日までに首都キエフに及んだ。

【細谷雄一さんの投稿プーチンの意図が、ウクライナを非武装化し、ゼレンスキー大統領を退陣させて、指導者層を処刑した上で、傀儡政権を創ることだとすれば、まさにヒトラーがフランス占領後にヴィシー政権で行ったことと同じです。自由を失えば、奴隷となります。ウクライナ国民がそれゆえ、そのような条件を前提としたロシアの「交渉」の要求を拒否するのは当然です。問題は、どれだけ激しいキエフ攻防戦が行われるか。プーチンとしては大規模な攻撃を行いたいでしょうが、そうすればウクライナ国民に憎しみの感情を植え付け、自らが描く傀儡国家で統治ができなくなる。戦闘の停止とロシア軍撤退は敗北と見なされるので、プーチンは閉塞感にあるのでは。

ロシア大手銀行を国際決済網から排除 米欧、中銀も制裁(2月27日
米欧カナダの6カ国と欧州連合(EU)は26日、ロシアに追加制裁する方針を表明した。

【白井さゆりさんの投稿米欧によるロシア大手銀行をSWIFTから除外する制裁についに踏みこんだのは、エネルギー危機に直面するEUが及び腰だとの印象をあたえてしまうと地域の安全保障に長期的な打撃が高まると判断したからだと思われる。ロシアがどのような対抗措置にでるのか注目する。EUはガスの4割、石油の3割弱をロシアからの輸入に依存しているが、ロシアがこれらの供給をさらに絞れば欧州経済で一段とエネルギー価格が高騰し企業や家計に大きな打撃が及ぶ。今年のEUの経済成長率は3%強が予想されていたが、3%弱に下押しされるであろう。市民の生活が困窮し不満が高まり欧州諸国の政治基盤が不安定化する恐れもあるかもしれない。

ウクライナ、ロシアと対話合意 プーチン氏は核でけん制(2月27日)
ロシアのプーチン大統領は27日、核戦力を含む軍の核抑止部隊に任務遂行のための高度な警戒態勢に移行するよう指示した。

【新井紀子さんの投稿】核兵器の使用の可能性について識者が言及し始めた。しかし、核兵器は(それが戦術核であっても)「どこに落とすのか・落とし得るのか」なしに考えることはできまい。

ロシアが一方的に侵攻したウクライナに対して、無条件降伏しないことを理由に核兵器を用いることは、西側諸国だけでなく、インドや中国も容認しないだろう。ましてや、それ以外の西側諸国の「どこかの都市」を(金融制裁を理由に)核攻撃するなら、それはグロティウス以来構築されてきた国際法秩序の終わりの始まりになる。

ロシア、信用危機に直面 G7は追加制裁で一致(3月1日
欧米日の金融制裁でロシアが信用危機に直面している。通貨ルーブルの急落や外貨取引を制限する制裁を受けて、対外債務に債務不履行(デフォルト)の懸念が高まった。

【大槻奈那さんの投稿】既にロシア中央銀行が、ルーブル建国債の外国人への利払いを禁止すると報じられましたので、ロシアのSD(セレクティブ・デフォルト)はほぼ確定ですね。SWIFTやユーロクリア、クレジットカード等大手の決済網から排除された今、ロシアマネーに残されたルートは、中国のCIPS、中小決済網(Fintech等)や行内送金、手作業の送金手続き、暗号資産程度でしょう。当面の鍵は中国の対応と思われます。一方こうした資金の流れの問題は短期的な話ですが、中長期的には、ロシアの今回の軍事行動が金融取引相手に社会性を求める流れ(ESG)に反する可能性がある点が重要。制裁が解かれたとしても今後の取引は疑問です。

中国指導部7人がウクライナ巡り激論 中ロ結託に疑義も(3月2日)
ロシア大統領のプーチンがウクライナ東部2州で親ロシア派武装勢力が実効支配する地域の独立を承認し、侵攻に踏み切った頃、中国内では予想をはるかに超える心配の声が出た。

【柯隆さんの投稿】China Sevenの動向をどうやって知ったか、わからないが、今の指導部では、保身のための忖度は主流であり、是々非々の議論ができないはずである。習政権が考えるのは米ロとのトライアングルにおいていかに得点を多く稼ぐかの一点ではなかろうか。最初は完全にロシアの肩を持っていたと思ったが、この2、3日、米国寄りの発言も王外交部長の口から聞こえてきている。「内閣不一致」ではなく、国際情勢に対する認識と判断のずれが生じているだけで、右往左往しながら、結局失点してしまう。国連決議で中国は棄権票を投じた。ロシアにもアメリカにも見下されてしまうのでは

Appleやナイキ、ロシアで販売停止 消費財にも波及(3月2日)
米アップルがロシアで「iPhone」などの製品販売を中断したことが1日、明らかになった。ロシアで同社の通販サイトから購入しようとすると「閉店中」と表示される。

【蛯原健さんの投稿】ロシアの地下鉄改札に並ぶ大勢の人々の行列の写真がAppleペイ、Googleペイが使用できないためであるという説明とともにソーシャルメディア投稿が出回っている。真偽のほどはともかくAppleとGoogleがその一切の同国向けサービスを遮断した場合ロシアの経済ならびに社会活動を大きく制限する効果に繋がるだろう。それは人道的観点で議論があるところだろうが、そもそも各国政府が取っている経済制裁とは正にそういう事であり現にロシア国民が「食うに困る」状況がすぐそこに迫っている。日頃「国家をも凌ぐ」と称されるビッグテックには難しい選択である事はさりながら責任ある迅速な行動が世界から厳しく求められる。

北海ブレント原油、一時110ドル台 7年8カ月ぶり高値(3月2日)
ロンドン市場で原油先物相場が急伸した。国際指標の北海ブレント原油先物の5月物は日本時間2日の取引で一時1バレル110ドル台に乗せ、期近物としては2014年7月以来約7年8カ月ぶりの高値水準となった。

【永浜利広さんの投稿】足元の原油価格と過去の交易利得(損失)との関係から、今後の原油先物価格が平均80ドル/バレル程度に落ち着くと仮定すれば、22年度は▲1.6兆円程度の所得の海外流出にとどまると計算されます。しかし、今後の原油価格が平均90もしくは100ドル/バレル程度となると、22年度はそれぞれ▲3.1兆円、▲4.6兆円もの所得の海外流出が生じることになります。これは、原油価格が足元の100ドル/バレル台の水準で推移すれば、消費税率+1.6%ポイント引き上げと同程度の負担増が生じることを意味します。

こうしたことからも、足元の原油高が持続すれば、日本経済に甚大な悪影響を及ぼすことになるでしょう。

ウクライナ避難民「日本に受け入れ進める」 首相表明(3月2日)
岸田文雄首相は2日、ロシアによるウクライナ侵攻で国外に避難する人について「日本への受け入れを今後進めていく」と表明した。

【原武史さんの投稿】第二次世界大戦が勃発した翌年の1940年にドイツに侵攻されたポーランドからリトアニアに逃亡してきた大量のユダヤ人避難民を救うため、リトアニア領事館にいた杉原千畝が独断でビザを発給したことを思い出しました。このときはソ連のシベリア鉄道を経由して敦賀港まで避難民が送られてきましたが、ロシアに侵攻されたウクライナからポーランドに逃げてきた避難民を日本が受け入れるという点は共通するものがあると思いました。

「ロシア即時撤退を」国連決議141カ国賛成、5カ国反対(3月3日)
国連総会は2日の緊急特別会合で、ロシアによるウクライナ侵攻に「最も強い言葉で遺憾の意を表す」とする決議を日本や米国など141カ国の賛成多数で採択した。

【詫摩佳代さんの投稿】拘束力はありませんが、前回より多くの国を巻き込んで、強い非難を示し、結束を確認できたことは有意義だったと言えるでしょう。露へのしかるべき対抗措置に際しての、強固な後ろ盾を得たことになります。2代国連事務総長ハマーショールドは「国連の役割とは、国際社会を天国にすることではなく、地獄に陥れないようにすることだ」という有名な言葉を残しています。昨今、国際機関の硬直性や限界が目につきますが、加盟国のフォーラムとして、また国際規範を確認し、メッセージを発する場としては依然役割を担っています。他方、今後の国際社会には、今回の決議を後ろ盾とし、露の蛮行に実質的に対処していくという大仕事が待っているのですが。

ロシアとベラルーシ選手、北京パラ参加一転認めず IPC(3月3日)
国際パラリンピック委員会(IPC)は3日、緊急理事会を開き、2日に「中立的」な立場で認めたロシアとベラルーシの選手、役員の北京パラリンピックへの参加を、一転して認めない決定を下した。

【福井健策さんの投稿】コメントするのに、ここまで悩んだことはありません。スポーツと政治、個々のアスリートと国家を切り離そうとして来た数十年のスポーツ界の努力は、ロシアの歴史的蛮行と国際危機の前に消し飛んでしまったかのようです。

同様の動きは、ロシア等との文化交流にも恐らく既に及んでいるでしょう。本来はスポーツや文化での交流と相互理解こそが、戦争や反目への最大の対抗策であるはずなのに、です。

私にはまだこの決定の是非を語る思考はありません。ただし、IPCは、(個人に危害が及ばない限度で)理由とされた「手に負えない状況」や今回の検討経過を最大限開示すべきでしょう。せめてこの経験から、後世が何かを学べるように。

ウクライナ停戦対話、民間人の退避中は一時交戦停止(3月4日)
米CNNなどによると、ウクライナとロシアは3日、停戦をめぐる2回目の対話で、軍事衝突が起きている地域で民間人が退避している間は交戦を一時停止することで合意した。

【小泉悠さんの投稿】ロシア軍はこれまで、チェチェンやシリアで都市への無差別砲爆撃をおこなってきました。

これに対してウクライナでは都市攻撃はある程度抑制されていたように見えますが、攻略が進まない中でいよいよ同じような手法を使い始めたようです。

これは桁違いの民間人犠牲者を産むものですから、民間人の退避に向けた人道回廊が設置できるのはいいことですが、根本的にロシアのやり方には大きな問題があるという点は指摘しておきたいと思います。

ウクライナ、欧州最大級の原発で火災(3月4日)
ウクライナ南部ザポロジエにある原子力発電所で4日、ロシア軍の砲撃を受け火災が発生したとウクライナのクレバ外相がツイッターで表明した。

【竹内純子さんの投稿】通常は、原発を攻撃するというのは相手のエネルギー供給の首根っこを押さえるのが目的であり、原発自体を破壊しようというものではないはず。それをやったらロシア軍が真っ先に汚染されることになりますので、軍の離反を招く可能性もあることは、プーチンも理解しているはずですが、この侵略自体狂気なので、何とも言い難い・・。

ウクライナの国営送電網運営会社は、2017年から電力系統の接続先をロシアからEUに徐々に切り替えており、ちょうどこの攻撃が始まった時に切り替えを実施したところでした。今のところ、ザポリージャ原発周辺の空間線量に大きな変化は見られませんが注視必要です。


Think!
平日のニュースに投稿がつく「Think!」。これまでの投稿一覧と、エキスパートのみなさんのご紹介は次のページから。

【投稿一覧】
https://r.nikkei.com/topics/topic_expert_EVP00000
【エキスパート紹介】
https://www.nikkei.com/think-all-experts

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