気候変動の影響 「Think!」エキスパートが読み解く - 日本経済新聞
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気候変動の影響 「Think!」エキスパートが読み解く

日経電子版「Think!」は、各界のエキスパートが注目ニュースにひとこと解説を投稿する機能です。今回は、気候変動に関する主な投稿をまとめました。(投稿の引用部分はエキスパートの原文のままです)

「揺らぐエネルギー供給」をThink!

揺らぐエネ供給・温暖化対策 1.5度目標、3年後が分水嶺(8月30日)
地球温暖化を抑える脱炭素が試練の時を迎えている。ロシアのウクライナ侵攻によりエネルギーの安定供給が揺らぐ危機が起きた。化石燃料を使う発電所の稼働が増えるなかで、気温上昇を産業革命前から「1.5度以内」に抑える「パリ協定」の目標を実現できるかの分水嶺も3年後に迫る。

【諸富徹さんの投稿残念な教訓は、深刻な自然災害が起きるまでは真の温暖化対策が取られることはないということです。アメリカが目覚めたのは、2005年のハリケーンカトリーナ襲来によってでした。にもかかわらず世界で、いまだ温暖化否定論・懐疑論はやみません。こうした認知の遅れに加えて、温暖化対策にコストがかかることが、「経済成長 vs 温暖化対策」の対立を生み、さらなる遅れにつながっています。しかし放置すれば、フロリダだけでなく世界の大都市の沿岸部は水没の危機にさらされ、経済活動どころではなくなります。この夏、北半球は尋常でない高温・熱波に襲われ、中国は異常渇水に苦しんでいます。もはや、多くの時間は残されていません。

【福井健策さんの投稿】まさに、試練の時ですね。2つのことを考えました。ひとつは、既に我われは人々が移住をはじめるような、「初期・温暖化後」の世界に住んでいるということ。まるで世界中の至るところにダムで水没する村のような情景が広がる、すぐそこの未来です。もうひとつは、移住でも生活の変化でも逃れようのない、温暖化の負の影響です。急激な気温の変動は恐らく新たな感染症の拡大や食物生産への打撃を生みますが、その影響から逃れられる地域はないでしょう。他の方も書いていたように、地球環境は、あらゆる経済・社会活動の基盤です。本当に広い視野をもった、現状のレポートと現実解の議論を期待したいと思います。

「温暖化ガス削減目標」をThink!

2030年温暖化ガス10.6%増 各国目標分析、パリ協定遠く(10月26日)
2030年までの温暖化ガス削減目標が不十分な状態にある。国連機関が26日公表した報告書では、各国の計画を積み上げても30年の排出は10年比で10.6%増える。気温上昇を1.5度に抑えるなら45%減、2度なら25%減とする「パリ協定」の目標は遠い。

【白井さゆりさんの投稿】2021年からのエネルギー価格の高騰とウクライナ戦争によるエネルギー不足で化石燃料の生産・消費は増えており、計画よりも遅れる分だけ数年後にはより脱炭素・低炭素に向けた移行計画を加速させる必要がある。EUは中長期目標の引き上げを検討中だ。現在世界各国でエネルギー価格の高騰がインフレの主因となっており、支援を拡充している国も多い。一方で、化石燃料からの依存を減らす中長期的なグリーン戦略も必要で、バイデン大統領が成立させたインフレ削減法はそうした見解を反映している。実際、世界で再生可能エネルギーの生産は増えている。現在はどの国もインフレで苦しい状態だが将来を見据えた中長期的政策も忘れてはいけない。

「カーボンプライシング」をThink!

炭素値付け、段階引き上げ案 排出量取引は26年度本格化(10月26日)
政府は二酸化炭素(CO2)の排出に金銭負担を求める炭素税などの「カーボンプライシング(CP)」について、低い負担額で始め、段階的に引き上げる方策の検討に入った。経済への影響を考慮し、本格導入まで一定の期間を置く。

【中空麻奈さんの投稿】GXは重要だが、さりとて財源は必須。同財源をGX経済移行債(この呼び名も仮称のまま、トランジションとグリーンは違うのにGX経済移行債=GX債と平気で表記され続けている)で賄うというが、その財源となるはずの炭素税の議論は一切なし、排出権取引は炭素価格を段階的に引き上げ、本格化は26年度という。23年度にスタートするとして、どれくらいの規模の市場となるのか、よく見えない。そもそも26年度から本格化できるのかも疑わしい。対象を絞らない物価対策こそ見直さねばならないはずだが、それと並走し難いという理由で、さらに遅れることも想像に難くない。対応の遅れは日本の国益を損なうとあるが既に相当遅れている。

「脱炭素『移行』」をThink!

脱炭素「移行」に集まるマネー、現実路線に歩み寄り(8月31日)
カナダの運用会社ブルックフィールドが6月に設定した150億ドル(約2兆円)の巨大ファンド。「世界トランジション(移行)ファンド」との名称で、年金基金など100以上の投資家から資金を集めた。

小山堅さんの投稿】脱炭素化の将来を左右する要素には、政府の政策、民間企業の取組、市民の選択、など多様なものがあるが、それらに共通して影響を及ぼす決定的に重要な要因がファイナンス、資金の流れとそれに支えられる投資だ。昨年までは、カーボンニュートラル一色に染まっていた世界の論壇が、同時多発的なエネルギー価格高騰とウクライナ危機発生によるエネルギー安全保障の重視の潮流の中で変化し、脱炭素化とエネルギー安全保障の両立に改めて新たな重要性を付与された。その中で双方の解の両立のための「移行」に向けたファイナンスが脚光を浴びるようになっている。マネーの流れが本当に現実路線にシフトしていくのか、見極めていく必要がある。

「ブルーカーボン」をThink!

ブルーカーボン、食の革新 海の森・海藻がひらく未来(9月16日)
コンブにノリ、ヒジキ。日本の食卓で昔から身近な海藻が、今、世界中から注目されている。国内外で新しい食体験をもたらし、食の持続可能性においても期待を集める。海藻による二酸化炭素(CO2)吸収など、地球環境を守る上でもその価値が高まっている。

【吉高まりさんの投稿】サステナブルファイナンスにおいて自然資本や生物多様性の保全が対象になっている。海洋資源について、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が持続可能な海洋資源の利用を「ブルーエコノミー」として提唱し、金融にも関連する海洋採掘等のリスクについて報告書を公表した。国際金融公社も気候変動問題でのグリーンボンド原則を基にブルーに適合と考えられる資金使途の例をまとめたガイダンスを公表し、マルハニチロがブルーボンドの発行検討を公表している。ブルーカーボンはまだクレジットとして公式に認められていないが要注目だ。これらの民間の動きを支援する政策強化が求められる。

平日のニュースに投稿がつく「Think!」。これまでの投稿一覧と、エキスパートのみなさんのご紹介は次のページから。

【投稿一覧】
https://r.nikkei.com/topics/topic_expert_EVP00000
【エキスパート紹介】
https://www.nikkei.com/think-all-experts

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