/

1ドル=127円狙う海外投機筋 円買い介入観測もスルー

長期金利の上昇を抑えるため無制限に国債を購入する日銀の「連続指し値オペ(公開市場操作)」は、28日の欧米市場でも注目された。このニュースで初めて円安の構造的要因を知った外国人投資家も多い。「寝た子を起こす」結果となった。

しかも、日米のインフレ率や金融政策の方向性の違い、資源を外国に依存する日本の貿易赤字の傾向など円安要因は分かりやすい。国際商品市況や地政学的リスクが複雑に絡み合う市場環境に振り回されてきた欧米の一般投資家の視点に立てば、円売りは納得してリスクを取れる対象だ。ウクライナ有事を巡っても、安全通貨としての円買いより、輸入額急増という円売り要因が勝っている。

そもそもニューヨーク市場の感覚は、安全通貨といえばドルこそ王様なのだ。日本の国内総生産(GDP)は米国の4分の1なのに、米連邦準備理事会(FRB)の総資産が約9兆ドルに対し日銀は5兆ドル半ばまで膨張している。さらにFRBは資産圧縮を開始する段階だが、日銀は量的緩和を継続中でテーパリング(緩和縮小)も始まっていない。今月25日には金融引き締めに慎重な「ハト派」の主導格だったはずであるニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁がFRBの1回の利上げ幅0.5%もありうると発言。米長期金利が一時2.5%まで急上昇したばかりだ。

振り返れば、2021年10月に本稿で「円安も外国人主導、1ドル=118円オーバーシュートも視野」と言及した時点では、まだ「先駆け」だった。それが、円ドルは「最も混み合うトレード」となる可能性すら感じられる。投機筋のターゲットは、118円から123円、さらには127円と段階的に上がってきた。マーケットの実勢は125円に到達し、勢いは加速している。彼らは「連戦、連勝」のモメンタム(勢い)に乗り「サンキュー、ミスタークロダ」と言い放つ。

ドルの総合的な価値を示す「ドルインデックス」は高騰しており、100の大台に接近中だ。ドル買いトレードの通貨ペアとして通常はユーロが選択されるが、今回はドル円にスポットライトが当たっている。低金利の円を調達通貨とする「円キャリートレード」が復活してきた。

日銀が初めて打ってきた「連続指し値オペ」という金利抑え込み政策は「円安覚悟の窮余の一策」とみられている。日本の当局による為替介入観測も流れるが、世界的な金利上昇に逆行する為替介入が成功する確率は低い。世界の外為市場がドル高志向を強めており、介入が失敗したときの代償は高くなる。さらにインフレ退治を優先させる米国は輸入物価を抑えるドル高を容認する姿勢だ。日銀の姿勢は「自国通貨安政策」と批判するのではなく、本音では歓迎だろう。

日銀の抱えるジレンマが露呈し、海外勢の円売り攻勢は一時的なものというよりはトレンドになりつつある。28日は125円に達した段階でいったん利益確定の円への買い戻しが集まった。だが、123円台まで戻すと、すかさず改めて円売りのタイミングを模索するファンドは多い。ファンドのなかでも、動きの中心は「商品投資顧問(CTA)」と呼ばれる短期筋から中長期で売買する「グローバルマクロ系」に移ってきている。22年後半から23年前半を見据え、130円へのオーバーシュートすら絵空事とはいえない地合いである。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

日経電子版マネー「豊島逸夫の金のつぶやき」でおなじみの筆者による日経マネームック最新刊です。

この書籍を購入する(ヘルプ):Amazon

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

企業:

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン