Jさん、30代既婚メーカーエンジニアの堅実運用
投信ブロガー
ブログ「Jさんブログ」を運営している「Jさん」は、東証上場のメーカーに勤める30代前半の機械系エンジニア。共働きの妻と2人、愛知県の賃貸マンション(会社からの家賃補助あり)で暮らしている。
積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo)といった税制優遇制度が普及しつつある中でも、「投資は怖い」として資産運用に距離を置く人はまだ多い。自らの少額投資の実践を記録することで、お金に不安を持つ人々が資産形成を始める際の参考になればと思いブログを開設したという。Jさんの資産運用を聞いた。
社会人3年目まで貯金ゼロ
――投資を始めたきっかけを教えてください。
「2019年に結婚したことがきっかけです。就職してから3年間は散財するばかりで、貯金はまったくありませんでした。その後、300万円くらいのお金がたまりましたが、28歳で結婚した時に、結婚式や新婚旅行の費用でほとんどなくなってしまいました」
「これではいけない、自分一人だけの人生ではないと心機一転。そこから投資を始めました。はじめは損をするのではないかと不安でしたが、一時的に含み損を抱えた後に元本回復したことで、長く続ければ着実に資産が増えていくのを身をもって体験することができました」
「結婚した当初は、すぐには解約できない財形貯蓄と積み立て型の生命保険に入っていて、つみたてNISAの年40万円の非課税枠を消化するのが精いっぱいでした。そのうちにリスクを取って投資する方が得策と気づき、財形貯蓄を取り崩してリスク資産の割合を増やしました」
――ブログはいつから始めましたか。
「20年12月からです。投資を始める前、投信ブロガーの方々の書き込み内容を読んで参考にしました。自分も同じようにアウトプットしてみたいと思ったことがきっかけです。まだ駆け出しの投資家ですが、資産が少ない段階からの資産形成を記したブログも何かの役に立つのではないかと考えました」
米国株インデックス投資がメイン
――資産配分を教えてください。
「現時点の資産配分は、一般の投資信託が30%、米国の上場投資信託(ETF)が30%でどちらも米国株に投資するタイプです。残りは積み立て型の生命保険が30%、現金が10%です(23年2月末時点)」
「今後は冠婚葬祭用に現金50万円程度を残して、それ以外はリスク資産の投資信託やETFに振り向けようと考えています」
――どのようなファンドに投資していますか。
「世界経済が米国主導の展開となるのはこれからも変わらないと思っています。そのため、米国株指数への連動を目指す低コストのインデックスファンド2本に毎月5万円を積み立てています。他に、配当金に着目した米国株ETFをお金に少し余裕がある時に一括購入しています。ETFの分配金が出る3カ月に一度、夫婦でちょっとぜいたくな外食をするのが楽しみです(図A)」

懐疑的だった妻も投資を増額
――ご家族も投資をしていますか。
「私が勧誘する格好で20年8月から妻もつみたてNISAを始めました。最初は月1万円の少額投資です。投資への恐怖感をぬぐえないようでしたが、コロナショックで含み損になってもその後の戻り相場で回復してからは、積極的に投資するように変わりました」
「今では給与から、余剰資金(月5万円)を全額投資に回すようになり、今後は自らが保有するETFの分配金の一部を洋服やアクセサリーを買う時の足しにしたいと言っています」
新NISAは1年目から上限投資
――24年からの新たなNISAはどう活用しますか。
「恒久的な非課税制度になるので大きく活用します。現行のつみたてNISAの運用はそのまま続けますが、まずは米国ETF2本の投資を新NISAへ切り替える予定です」
「22年6月に転職をしました。給料アップが期待できるのと共働き世帯なので、24年からの1年目はつみたて投資枠と成長投資枠を合わせた年非課税枠上限の360万円まで投資できそうです」
「ただ、360万円の現金を2年目以降も続けて用意するのは難しいので、含み益状態にある特定口座のファンドを売却するなど、支出を減らしながらなんとか資金を捻出します」
高配当株ETFや個別株で失敗体験
――投資で失敗した経験はありますか。
「投資を始めた頃、高配当に憧れて米国の高配当株指数に連動するETFを購入しました。コロナショックで元本が半分になり、その後、若干の含み益になるまで待って売却しました。投資の中心にするのは普通のインデックスファンドの方がいいと痛感しました」
「ツイッターでバイオテクノロジー関連株が有望と噂になったことがあり、さっそくETFの分配金を元手に米バイオ関連を2銘柄、購入しました。少額ですが今は含み損のまま塩漬け状態です。負け惜しみかもしれませんが、自分はつくづく個別株投資に向いていないのを思い知らされました」
――資産運用をして良かったですか。
「まだ投資を始めてから3年あまりですが、400万円ほどの投資資金が1.2倍の約480万円にまで増え、着実に資産が積み上がる手応えを感じています(23年2月末時点)。生活面での将来不安が薄らぎ、我が家では老後2000万円問題はおそらく大丈夫と、心に余裕を持つことができています」
あせりは禁物、投資は地道に
――これから投資を始める人たちにアドバイスを。
「ちまたには情報があふれていて、投資イコール損をする、あるいは投資イコールすぐに稼げると錯覚する人もいるかもしれませんが、資産運用も人生と同じように急には結果が出ないと思います。あせって『簡単に1億円が稼げる』などと題した書籍や情報に飛びつくのではなく、堅実な運用に徹してはどうでしょうか。私の投資はコツコツ地道にいきます」
(QUICK資産運用研究所 聞き手は笹倉友香子、高瀬浩)