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「お金の話を自分ごとに」金融教育家の塚本氏

投信観測所

今年4月に高校の金融教育が拡充されてから半年あまりが経過した。同じタイミングで成人年齢が18歳へ引き下げられ、若い人がお金に関するトラブルに巻き込まれる危険性も高まっている。若いうちに金融知識を身につけておくことの必要性や、周りの大人がどうサポートしていくべきかなどについて、金融教育家として活躍する塚本俊太郎氏に話を聞いた。

――今年3月まで金融庁で金融教育を担当され、教材づくりなどにも取り組んでこられました。高校でお金のことを学ぶ意義をどう考えていますか。

「社会人になってからでは、金融教育を全員に届けることが難しくなります。興味がある人は自ら学べる環境が整ってきていますが、興味のない人には届きません。ですから、小学校から高校までの教育課程で継続して基礎的な知識を身につけていく必要があります。個人がお金とどう向き合っていくかを学ぶきっかけになればと期待しています」

――金融教育を家庭科の授業で取り扱うのは意外に感じました。

「社会科の『公共』で金融・経済をマクロ的な視点で学び、生活全般を扱う家庭科では個人の人生やお金について学ぶカリキュラムになっています。大きな柱は家計管理とライフプランニング、資産形成の3本で、これらをまんべんなく学習するのが理想です。家計管理では収入と支出の把握、ライフプランニングでは多様な人生設計のなかでどのように資金計画を立てていくかを、さらに資産形成で預貯金や投資でどう将来に備えていくかを学んでいきます」

「授業では専門用語などをすぐに理解できなくても、全体のコンセプトを知ることが大事です。多くの人は社会人になって急に投資信託や保険などの金融商品に触れることになります。前もって学校の授業でどのようなものかを耳にしておけば、いざ実践するときに記憶を掘り起こすことができます」

――学校での金融教育について、今後の課題はありますか。

「今回の拡充は大きな一歩だと思いますが、学習内容は教科書に2ページほど追加されただけで、金融教育にあてられる授業時間も年間2~3時間程度と十分とは言えません。より時間をかけて学べるようにすることが次の課題です。また、一方的な講義では生徒が興味・関心をもちにくいため、シミュレーションで想像力を膨らませたり、ゲーム形式で楽しんだりしながら、一人ひとりがお金の話を『自分ごと』として考えられるように工夫していくことも望まれます」

――家庭でできることはありますか。

「日本にはお金について話さない家庭が多くあります。子どもに心配させたくない親心からでしょうが、最近は日本でも奨学金を借りて大学に進学する若者が増えており、早いうちにお金のことを知っておくほうが進路を考えるうえでも役立ちます。例えば塾や習い事の費用など子どもに関連する部分だけでも、話のきっかけになるでしょう。また、キャッシュレス化が進むなかで、お金が無尽蔵ではないこと、親が稼いだお金で生活が成り立っていることなど、当たり前のような概念についても、小さいころから伝えていく必要性が高まってきています」

――お金について学ぶ生徒や、教える立場の先生方にひとことお願いします。

「生徒は身近なところからお金について興味を持ち、少しずつでも学んでもらいたいと思います。お金の問題に対する正解はひとつではありません。将来お金のトラブルに巻き込まれたり、生活が立ち行かなくなったりするのを避けるためにも、自分の頭で考え、基礎知識を蓄えながら答えを探してみてください」

「先生方には、最初から完璧でなくてよいので、お金について改めて考え、自身でも実践しながら教えていただきたいです。実際に家計を見直したり、資産形成に取り組んだりすることで教える内容に深みが出てきますし、そこから得られる知識や経験が生徒への進路指導などの場面で役立つこともあります。授業のアイデアは金融庁などが公開している教材や学習コンテンツも参考になるので、うまく活用しながら前向きに取り組んでいただけたらと思います」

塚本俊太郎氏
外資系運用会社のファンドマネジャーなどとして活躍した後、2020年に金融庁へ入庁。小学生向け金融教材「うんこお金ドリル」の作成、高校・大学・社会人向けの金融教育、個人投資家向けイベント「つみップ(つみたてNISA Meetup)」などを担当。22年3月に任期満了で退職し、現在はフリーランスの金融教育家として活動

(QUICK資産運用研究所 西本ゆき)

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