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GDP失速なら日本株は買い、新常態の株価形成

日本の2020年10~12月期の国内総生産(GDP)は前期比の実質成長率が年率で12.7%と市場予測を上回った。15日の日本株買いは、予測から上ぶれた成長率が後押ししたとの解釈がある。確かに先物売りを仕掛けていた海外投機筋が念のため買い戻しに動いた面は指摘できよう。取引開始後に日経平均株価が短時間でいきなり3万円の大台まで急騰したのは「新規買い」というより「慌てた買い戻し」を想起させた。

ただし、中長期的な視点の外国人投資家の注目は、むしろ「新型コロナウイルス感染拡大の第3波で21年1~3月期がマイナス成長の見通しで、景気の回復基調は半年で息切れ」という点に向けられている。「日本でも追加の財政出動や金融緩和が期待できる」との読みだ。

世界の市場を回遊する余剰マネーはいまや、まず「経済的に悪いニュース」を探し出し、政策対応への期待をはやして買い上げるようになっている。

米国では追加経済対策について、1.9兆ドル規模である与党・民主党案を単独強行採決するか否かが市場の最大の関心となっている。個人への追加給付金1400ドルに年収による受給資格制限を設け、さらに最低賃金15ドル案を撤回することで共和党と合意を目指すとの観測も根強い。その場合、総額は1.5兆ドル以下まで縮小するだろう。米国株の次のレンジは、その数千億ドルの差を映す水準に収れんしていきそうだ。

日本株を巡っては、外国人投資家はまず追加財政支出の規模を探っている。日銀に関しては追加金融緩和のツールボックス(道具箱)に有力な政策手段が残っていないとの見解が主流で、なんといっても今後の上場投資信託(ETF)購入が注目されている。日銀はこれまでの日本株を支えてきたとの認識が浸透しているためだ。

日本株のバリュエーションについては、国内では割高感も指摘される。しかし、アップルやテスラなどの従来の「市場の法則」をはるかに超えた株価の上げっぷりに慣れてしまった米国市場では、感覚がまひしているかのごとき状況だ。日経平均が3万円といっても、米国株のたどってきた道を日本株も歩むとクールに見守っている。

米国で関心が高まっているのは、政権と株式市場の距離感だ。米バイデン政権は、ウォール街の「エリート」たちと一線を画し、中間層重視の姿勢を示している。バイデン氏は富裕層の株式売買益への課税強化や規制の強化を大統領選挙中には掲げてきた。株価を「政権の通信簿」として重視したトランプ前政権との違いが鮮明だ。

日本では安倍晋三前政権は株価重視の姿勢だったが、現政権あるいはその次の政権については未知数とみられている。「日本では近々、補欠選挙があるそうだが、その見通しが知りたい」との質問もある。そこまで日本の政治状況をフォローしていることに「日本株への本気度」がにじむ。

これまでは株式の世界地図で「内海」に位置していた日本株が、いよいよ「外海」の巨額余剰マネーという荒波に本格的にさらされる緊迫感が漂う。3万円という水準をいとも簡単に超えてしまう新常態を直視すべきであろう。

株高の恩恵が偏る傾向については、日経平均が3万円を突破した今こそ、投資初心者からESG(環境・社会・企業統治)を重視した投資の発想などを理解するための啓もう活動強化が喫緊の課題となってきた。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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