のりさん、「資産運用に特別な能力不要」で堅実成果
投信ブロガー
「家族を守るお金のブログ」を運営する「のり」さんは、小売り系フランチャイズチェーン(FC)の本部で働く50歳の男性会社員。パートタイマーの妻と小学生の子ども2人の家族4人で、首都圏の賃貸住宅に暮らしている。
子どもの誕生をきっかけに39歳から投資を始めたのりさんは、もっと若い頃に資産運用の扉を開いていればと後悔しつつも、これまでの運用成果には満足しているという。ブログを通して多くの人に資産運用の特別な能力は不要と知ってもらうのと同時に、自身の子どもたちにも資産運用につながる知識を早くから身に付けてほしいと思い、家庭内で投資教育を実践している。のりさんの資産運用を聞いた。
子どもの誕生で将来の備えを意識
――どんなきっかけで投資を始めたのですか。
「独身時代はまったく投資に興味がありませんでしたが、結婚して子どもを授かった時に初めて、将来に備えた資産が必要になることにはたと気づきました。銀行や保険会社に相談してもピンとくる投資方法がなく、書店でたまたま手にとった本で指数に連動する『インデックス投資』という手法があるのを知り、2010年6月に資産運用へ踏み出しました」
「最初は、その本で推奨されている資産配分を参考に、毎月10万円ずつに分けて資産ごとにインデックスファンドを購入。元手は前職を退職した際に売却し現金化した従業員向けの持ち株です。その後は、積み立て投資を続けながら、運用リターン向上を狙って海外先進国株と新興国株の比率を上げ、国内債券型の大部分を売却して、比較的高利回りのネット銀行の定期預金へ預け替えをしました」
「現在の資産配分比率は海外先進国株が30%程度、国内株と新興国株がともに18%程度、定期預金が22%、その他、内外のREIT(不動産投資信託)と債券が少しずつです(20年12月末時点)。ネット銀行の定期預金は、将来株価が下がった際の買い増し資金に充てます。このほか、日常生活で必要となる生活防衛資金を現金で保有しています」
運用資産額のグラフ化で投資成果を実感
――どんなファンドに投資していますか。
「運用コストの低いインデックスファンドを12本保有しています。そのうち、税制優遇の一般NISA(少額投資非課税制度)口座に3本、企業型確定拠出年金(DC)に2本と計5本のファンドに、毎月6万円程度の積み立て投資をしています(図A)」

――成功体験を感じていますか。失敗はありますか。
「コツコツとインデックス投資を継続してきた結果、想定以上の成果を得ることができました。運用資産額の推移をグラフ化すると年々資産が増えているのが実感でき、将来のお金の不安が相当解消しました。投資を始めてから10年半で運用資産額は8割増えています(20年12月末時点)。資産運用をしないで預金や保険を保有しているだけでは、これほどは増えなかったはずです(図B)」

「ただ40歳間際に投資をスタートしたので、年齢の割にはリスクをやや大きくとっています。もっと若い頃から資産形成ができていれば、無理なく資産を増やすことができたのではないかと後悔しきりです。子どもたちに同じ思いをさせたくない気持ちが高まり、家庭内で投資教育を始めました」
「妻には資産運用の内容をもれなく伝えてあり、ガラス張り状態です。いわば資産運用を通じて家族全員で家庭を経営している状況です」
子どもには楽しみながら投資の実体験を
――どのように投資教育をしていますか。
「少しずつお金の知識を持ってもらおうと、自作のパワーポイント資料を使って子どもたちに投資の必要性を説明しています」
「2人の子どもそれぞれに、全世界株、米国株、日本株、新興国株を投資対象としたインデックスファンドの中から2本を選んでもらい、1万円ずつ計2万円を未成年向けのジュニアNISA口座で購入しました」
「楽しみながら実際の投資を経験してもらうためのご褒美もあります。毎年1年間の運用成果を比べて一番増えたファンドには1000円を、10年後に一番増えたファンドには1万円を渡すことにしました。お小遣いから追加投資するのは子どもたちの自由です」
「投資を始めてから、子どもたちは購入したファンドの値動きを毎月折れ線グラフにしています。大きな値動きがあったときには、なぜそうなったのかを親子で会話し、投資を通じて世の中の動きにも興味を持ってもらうよう心掛けています」
「日本ではまだまだ学校での投資教育が不十分です。親が学んだ経験を早くから子どもに伝えることで、お金にまつわる知恵や知識を身に付けてから、実社会に送り出したいという考えです」
70歳を超えてからの取り崩しを想定
――資産運用の出口を意識していますか。
「現在50歳ですが、60代でも働き続けたいと思っています。妻の収入もあり、70歳頃までは取り崩すことなく積み立て投資を続けるつもりです」
「その後は、積み立てた資産を毎年定率で取り崩すことになりそうです。その頃の資産配分は、株式の比率が下がり、債券や現金など低リスク資産の割合が高くなっているはずです」
資産運用には特別な能力は不要
――資産運用がより多くの人に広がるにはどうしたらいいですか。
「資産運用には特別な能力や技能は必要なく、決して難しいもの・怖いものではないということが、世間に広く認知されるのが肝心だと思います。そのためにも、教育現場での投資教育の充実が大切なのはもちろんのこと、人々がファイナンシャルプランナー(FP)などのアドバイザーに気軽に相談できるようになるといいですね」
「私自身、今の会社人生をリタイアした後は、持っているFP2級の資格や『家庭経営』の経験を生かして、お金の相談に関する仕事に関わり、周りの人に投資をもっと身近に感じてもらえるよう、役に立ちたいと考えています」
(QUICK資産運用研究所 聞き手は笹倉友香子、高瀬浩)
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