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米国でも短期金利マイナス、長期金利変動のカギに

「米長期金利の乱」をプロの目線でみると、ニューヨークの短期金融市場への目配りが欠かせない。

米10年債利回りの変動が激しくなっているのは、投機筋が米国債の価格下落(利回り上昇)を見込んで空売りを仕掛けているからだ。9日は、長期債利回りは1・59%まで上昇した後、1・52%へ急低下した。空売り勢が手じまいのために買い戻しをした。これが米ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数の急反発のきっかけになった。国債の短期売買が株価のボラティリティー(変動性)を高めている。

ポイントは、投機筋が空売りをするためには、10年物国債を借りて売らねばならないことだ。かれらは連日、10年債を求めて奔走する。目を付けたのが短期に資金を融通し合うため債券を貸借するレポ市場だ。

ここでは、短期資金の貸し手が安全資産である10年物国債を担保として求める(債券を借りる)ことができる。その結果、レポ市場が10年債を手に入れる場と化した。こうなると、資金の貸し手の金利引き下げ競争になり、ついにマイナス金利が発生した。レポ金利はマイナス3・5%程度まで低下する場面があり、高いコストを払ってでも担保である10年債の獲得が優先されている。

国債の新規発行のための入札があれば、金利のマイナス幅は0・5%程度に縮小することもあるが、マイナス傾向は続いている。ヘッジファンドなど投機筋の空売り意欲は根強い。特に早ければ来週にも新型コロナウイルス感染対策の個人給付金として一人1400ドルの小切手が国民の手に渡り始める。個人消費の高まりは必至で、さらに米バイデン政権による第2次財政出動もこれからだ。インフラやグリーンエネルギー関連の「大型景気刺激策」は、1・9兆ドル規模の「コロナ救済策」とは別に立案する。このような「高圧経済」で、米長期金利が1・5%程度に落ち着くと考える市場参加者は極めて少ない。次の上昇めどとして1・7%から1・8%が意識される。

新規発行の入札も増えるが、レポ市場でのマイナス金利も当面は常態化しそうだ。レポ市場がプラス金利に戻ってくると、長期金利上昇の勢いが和らぐのを示す先行指標となりそうだ。

振り返れば2019年、20年にもレポ金利の異変はあり、プラス10%を超える場面もあった。テクニカルな一時的要因による事例がほとんどだが、信用収縮の兆しとの印象も市場に与えがち。ニューヨーク連銀は緊急流動性供給オペを強いられた。それが今やマイナス金利。過剰流動性相場がもたらす想定外の展開といえよう。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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