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恒大の社債買いあさる 日本株にも食指動かす海外投機筋

中国恒大集団の社債をはじめ中国の不動産関連の債券を、経営難に陥った企業の債務などを買い取るディストレスファンドが買いあさっている。デフォルト(債務不履行)リスクの高い債権を安値で買って反発の時を待つ。いずれ中国政府が、なんらかの形で救済に動くとの読みだ。例えばマラソン・アセット・マネジメントの首脳は出演したテレビ番組で購入を認めている。破綻寸前の企業の社債でも取引が成立するのは、こうした買い手が常に存在するからだ。彼らなりにデフォルト確率を計算して適正な価格を模索する。

「政局ラリー」に買った日本株を高値で売り抜けた海外投機筋は、株価の反落で再び食指を動かしている。すでに日本株でもうけが出ているため心理的な余裕はある。岸田文雄新首相の経済政策に知見もなく、深く調査するわけでもない。6日のニューヨーク市場でも岸田政権の経済政策や日経平均株価の8日続落は特段、話題になっていない。米連邦債務の上限問題、米長期金利の上昇、供給制約によるインフレ懸念、原油高、揺れる米連邦準備理事会(FRB)の金融政策、中国リスク、そして新型コロナウイルスの感染状況など問題は山積する。「悪いが日本のことまで関心が回らない」と親しいファンドマネジャーは言う。日本株について騒いでいるのは、ほんの一部の親日派投資家と証券会社などセルサイドの日本株デスクだけだ。

海外投機筋は、相場の流れを見極めてモメンタム(勢い)が上方向とみれば、果敢に買いに動く。方向が下とみれば、売りに転じる。理由抜きで動く。ここが、裏付けがなければ納得せず動かない日本人が誤解しがちなところだ。「政局ラリー」に参加した海外投機筋の動きを政策論から理解しようと試みても、彼らは高頻度取引を駆使してのパワープレーに徹している。その結果、日本株が海外投機筋の草刈り場となっているわけだ。

こうした海外の投機筋と接点を持つのは大変だ。筆者は元同僚の息子が大手金融機関のマネージング・ディレクターなどとして活躍していれば「君がオムツをはいていたころの写真を私は持っているよ」などという話から入るが、関係を築くには時間がかかる。そして彼らの動きを理解するには「そんな簡単な話?」と思うくらいのシンプルさで考えた方がいい。

海外投機筋が日本株について次にどう動くのか。手の内は容易に明かさず、会話のなかでのいつもと違う表現などが手掛かりとなる。例えば「下がるとすれば、どこまで下がると思うか」との質問が目立つときは、おおむね買いの入り口を模索しているものだ。現時点で、方向は「買い」ではないかと筆者は読んでいる。日本株は新たな上昇相場に入るのではないか。

日本株を冷静に見守っている投資家もいる。米大手年金基金など長期の投資マネーだ。彼らは、岸田政権の経済政策を様々な角度から分析している。所得再配分にせよ金融所得課税にせよ、あえて市場が嫌う政策を評価する傾向もある。筆者は、米国最大の年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)のトップのもとで働いたことがある。その際、米年金業界の人々の知己を得た。そうした彼らのうち米民主党員は、岸田政権の経済政策に興味を示す。短期的な痛みを伴う政策をあえて採る決断は評価されることもある。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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