米国が集団免疫獲得する日、テーパリング議論も解禁か
株価変動が激しくなっている。一因が米連邦準備理事会(FRB)の緩和縮小(テーパリング)観測だ。パウエルFRB議長が経済見通しを悲観的に語れば語るほど、緩和継続期待が高まって、投資家が安堵するのが現状だ。
逆に楽観論を述べれば「すわ、テーパリング示唆か」と警戒する。パウエル氏は現時点では、かたくななまでにテーパリング議論を封印している。とはいえ、いつかは訪れる緩和からの出口について、投資家の関心は高まる。
問題はそのタイミングだ。パウエル氏は「コロナウイルスこそFRBにとって最大の課題」と述べてきた。とすれば、コロナからの回復にめどがつく時期に金融正常化を語り始めるのではないか。最近ウォール街で聞かれる見解だ。
具体的には、米国が集団免疫を獲得する時期だろう。「集団免疫」の定義については、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が当初「60%から70%」と語っていたが、その後「70%から80%プラス」と段階的に引き上げてきた。
現時点で市場では今年秋ごろに70%程度なら達成可能との見方が広がる。集団免疫獲得への道は厳しい。特に変異ウイルスリスクに関しては、バイデン米大統領も「リスクシナリオ」として接種予定未達への予防線とも読める警告を発している。
しかし、集団免疫の獲得に近づけば70%程度でもパウエル氏の悲観論は和らぐ可能性がある。集団免疫獲得は経済正常化への決定打となりうる。市場にも高揚感があふれるだろうが、「悲観で育ち、歓喜で終わる」のが相場ゆえ市場関係者は複雑な思いとなろう。
豊島逸夫(としま・いつお)

豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com

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