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「好況よし、不況さらによし」今かみしめる創業者の言葉

日経ビジネス電子版

創業者や中興の祖らが七転び八起きする中で紡ぎ出した知恵の一言。先達が築いた「灯台」として、時を超えて今も人々の先行きを照らす。事業を興した幾多の試練の中に難局を生き抜くヒントがある。

「好況よし、不況さらによし」「やりの名人は突くより引くときのスピードが大切」「動機善なりや、私心なかりしか」。伝説の創業者の隠れた名言の意味を時代背景とともに解説する。

◇  ◇  ◇

松下電器産業(現パナソニック)の創業者・松下幸之助氏

松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助氏。言わずと知れた「経営の神様」は危機対応のヒントとなる名言も多い。1929(昭和4)年、大不況に見舞われて製品販売が激減。松下氏自身も病に伏せていた。

幹部が人員削減を打診すると、松下氏は首を振った。「人は1人も減らさない。日給も全額払う」。驚く幹部にこう続けた。「工場は半日操業にする。だが休み返上で在庫を売り切ってくれ」。解雇を免れた従業員は団結し、倉庫の在庫は数カ月で一掃されたという。

松下氏は「好景気のときは駆け足、不景気はゆっくり歩くようなもの」と説き、不景気は調子がいいときに目に入らなかった欠陥に気付く契機と捉えた。この発想から「好況よし、不況さらによし」との教えを残した。

本田宗一郎氏

本田宗一郎氏は、60年代に不況の足音が聞こえると、素早く二輪車の生産を調整。念入りに機械を手入れして生産再開時に従来より低コストで生産できるよう工夫した。本格的な不況時に他社が生産調整すると、本田氏率いるホンダは逆張りで増産に転じた。ピンチに力を蓄えて、四輪車進出への弾みをつけた。

著書『本田宗一郎 夢を力に』によると、「やりの名人は突くより引くときのスピードが大切である。でないと次への万全の構えができない」と説明した。

本田氏は次世代へのメッセージも多い。「まず自分のために働け。一生懸命に働くことが同時に会社のプラスとなる。会社だけよくなり、自分が犠牲になるなんて、昔の軍隊のようなことを私は要求しない」。その情熱で若者を刺激した。

ソニーの創業者の一人・井深大氏

ソニーの創業者の一人、井深大氏が起草した「設立趣意書」。「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」を掲げたのは有名な話。新分野開拓がソニーの「最善にして唯一の道」とした。

50年代にラジオ用トランジスタの開発で壁にぶつかるたびに「難しいからこそやる価値がある」と思い直した、と著書『井深大 自由闊達にして愉快なる』で回顧した。68年発表の「トリニトロン」を使ったカラーテレビも開発が難航。開発費が重荷となり、自らの責任と思い悩んだ。それでもあきらめず再検討を重ねて開発にこぎ着けた。

サントリーの創業者・鳥井信治郎氏

国産ワイン、ウイスキーの製造に挑んだサントリーの創業者、鳥井信治郎氏。「やってみなはれ、やらなわからしまへんで」。未知の領域へのチャレンジを周囲から反対されると、こう説得した。60年代、2代目社長の佐治敬三氏がビール事業に再参入する際に、この言葉をかけて背中を押したという。挑戦を尊ぶ価値観は今、サントリーの原動力になっている。

もう一つの口癖が「陰徳あれば陽報あり」。日ごろから人の見えないところで良い行いを積めば、いつか自分にもいいことになって返ってくる、という意味だ。

京セラの創業者・稲盛和夫氏

心構えの重要さを説くのが、京セラ創業者の稲盛和夫氏。自分だけがよければいい、とする「利己の心」、自分を犠牲にしても他人を助けようとする「利他の心」がある。周りの人を思いやる「利他の心」で判断すれば、良い仕事にもつながる、と教える。

84年、KDDIの母体となったDDI(第二電電)設立の際、巨大なNTTとの通信事業競争に挑むリスクは大きく、失敗の不安がつきまとった。「動機善なりや、私心なかりしか」。新規参入の社会的な意義、そして自らの覚悟を何度も心に問いかけ、腹を固めたとの逸話がある。

イオンの源流の一つ、岡田屋は江戸時代に創業。創業の地から店舗を移した際に、家訓「大黒柱に車をつけよ」が生まれた。大黒柱を動かしてでも、変化に合わせて生き残れ、との教えだ。

混乱期の教訓が「下げにもうけよ、上げでもうけるな」。第1次世界大戦後の1920年、生糸価格暴落の際に在庫を安売り。それを元手に値下がり品を多く仕入れて安く売り、消費者に支持された。「仕入れ値が上がっても販売価格は上げるな」。2020年1月。イオンはコロナ禍で封鎖された中国・武漢市でも営業を続けてこの教えを守った。

(日経ビジネス 岡田達也)

[日経ビジネス電子版 2021年1月27日の記事を再構成]

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