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移住者が島民と造る 香川・小豆島「まめまめびーる」

NIKKEI STYLE

オリーブの島として知られる香川県の小豆島には、地元の特産品が集まるブルワリーがある。中田雅也さん、史子さん夫婦が営む「まめまめびーる」(香川県小豆島町)が醸造するビールは、原材料にオリーブやしょうゆ、かんきつ類を取り入れ個性豊かだ。

定番のビールには「覚えてもらいやすいように」(史子さん)と、名前に色がついている。色を分けるのは地元の特産品で、「あか」はかんきつ類、「しろ」はハーブや味噌などの原料となるはだか麦、「きん」は米麹を使っている。

そして、「くろ」が醤油(しょうゆ)のもろみだ。小豆島は国の無形民俗文化財として登録された「讃岐の醤油醸造技術」の中心地の1つで、木おけ仕込みの伝統的なしょうゆ造りが残る。

島素材へのこだわりは他にもみられる。小豆島は国産オリーブの発祥の地であり、酵母にオリーブの花、水質調整にはオリーブの備長炭を使うビールもある。島民も島にできた醸造所に関心を寄せ、自分が作った農産物をビールに使ってほしいと提案する。「島の方と一緒に造る」(史子さん)が、まめまめびーるのポリシーだ。

醸造所は高松港(高松市)からフェリーで約1時間15分の坂手港(小豆島町)の近くにある。港から坂道を上って10分ほど、眼下には瀬戸内海が広がる。近くの美井戸神社には、タレントのビートたけしさんと現代美術家のヤノベケンジさんが共同制作した彫刻作品「アンガー・フロム・ザ・ボトム」が展示されている。これは現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」の作品の1つだ。

醸造所に併設した屋外テラスでビールを楽しむことができる。ビールに合うおつまみやランチのメニューも充実している。まめまめびーるは、インターネットに加え、香川県内の複数店舗でも販売している。

春から秋にかけては、週末夜に坂手港近くで「きまぐれびーる屋台」を開いている。地元の住民や乗船前の観光客が集まる。新型コロナウイルス禍で営業できない時期もあったが、感染状況が落ち着いたことで徐々に客足が戻ってきた。

ビール造りは雅也さんの悲願だった。大阪府出身の雅也さんは大学時代に米国で飲んだビールの味が忘れられず、社会人になってからも、いつかはビールを造りたいと考えていた。広告代理店を退職し、醸造所で修業を積んだ。

小豆島に縁はなかったが、海を見下ろせるロケーションが気に入った。夫婦とも「ここしかない」と移住し、2017年にまめまめびーるを開業した。

今後は小豆島との関わりをさらに深めていきたいと考えている。島内の農家や飲食店、宿と一緒にビールに合う食事のレシピを考案する。山や海に囲まれた島でのおいしい飲み方も重視し、レンタルサーバーも始めた。

雅也さんは醸造所にこもり、ビール造りにまい進しながら様々な素材や製法を試し続ける。探究心は湧き上がる一方だ。

(高松支局 鈴木泰介)

[日本経済新聞電子版 2022年6月23日付]

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