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外食従事者30万人減、緊急事態宣言で雇用はどうなる

外食の経営は厳しい。小売りの採用意欲は高い
日経ビジネス電子版

2度目の緊急事態宣言で打撃を受けている外食業界。夜だけでなく、ランチまで制限され始めた。新型コロナウイルス禍で職場から溢(あふ)れた外食のパート、アルバイトはこれまで、小売りなど人手不足の業態が吸収してきた。だが、小売りもいつまでも受け入れられるわけではない。外食従業員の働き口が確保できるかが見えなくなっている。

1月18日夜。都内のイタリア料理店「カフェ ラ・ボエム」はほぼ満席だった。時短営業による閉店を求められる午後8時を過ぎても店はにぎわっていた。運営するグローバルダイニングの長谷川耕造社長は首都圏の1都3県で緊急事態宣言の発令が確実となった1月7日、「20時までの営業では事業の維持、雇用の維持は無理」とコメントを発表。「今の行政からの協力金やサポートでは時短要請に応えられない」として商業施設の店舗を除く約30店で平常通りの営業を続けている。

政府は「昼間も含めて外出自粛を」と強調し始めた。これに対し、時短営業に応じた企業からも「ふざけんなよと」(サイゼリヤの堀埜一成社長)との声が上がる。

長谷川氏や堀埜氏の発言は、このままでは雇用の維持が困難になるという外食業界が恐れている事態を代弁したものだ。外食はパート・アルバイトを中心に店舗での雇用者数が大きい。総務省の調査によると、飲食店の従事者数は2020年10月で398万人。近年は430万人前後で推移してきたが、20年3月以降に急減した。

帝国データバンクによると、20年に負債1000万円以上で法的整理をした飲食業は780社と過去最多だ。「負債がない状態で廃業する店を含めればもっと多い」(同社)といい、多くの人が職を失った。営業が続いていても、時短や売り上げ減で働ける時間が減り、手取りも減って職場を替える人もいる。職場に残っているものの、シフトの調整で勤務時間の減少を余儀なくされるアルバイトも多い。

小売りのアルバイト大量採用

減った外食の従業員はどこに行ったのだろうか。「飲食店で働いた経験者が別業界の働き口を探すと小売りに向かう傾向がある」(マイナビアルバイトリサーチ課の松田美貴氏)。実際、小売りでは長年の過度な人手不足が好転しつつある。ローソンの自社サイトを通したアルバイトの応募数は、20年4月に前年同月比2.8倍となり、その後も同1.4~1.8倍と高水準の応募が続く。ファミリーマートも同様だ。

スギ薬局を運営するスギホールディングスは新規出店に伴い、20年4月からの9カ月間でアルバイトが約4000人増えた。21年2月期に45店舗を出店するニトリホールディングスは「マニュアルがあるので他業界から来ても即戦力になる」という。

外食から消えたパートやアルバイトの雇用を、コロナ禍で業績を落としていない小売業が支える構図がうかがえる。ただ、それがいつまでも続く保証があるわけではない。パートタイムの有効求人倍率は19年11月に1.72倍だったが、20年11月には1.13倍となった。小売りで職に就いたパート・アルバイトが簡単にやめるとは考えにくい。この間に長年の人手不足を解消した小売りもあり、採用には一服感が出始める。

400万人弱が働く飲食店の従事者は、サービス業の中で道路貨物運送業(204万人)や宿泊業(64万人)などに比べても多い。外食の雇用が悪化すれば、溢れた従業員はほかの業界に向かう。時短要請に応じる外食が持ちこたえられなければ、日本全体の雇用に及ぼす影響が大きくなる。

(日経ビジネス 庄司容子)

[日経ビジネス 2021年1月25日号の記事を再構成]

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