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焼き鳥+うな丼 ウナギファストフード、二枚看板で急伸

片平雅之(かたひら・まさゆき)氏 1975年生まれ。大阪府出身。高校卒業後の93年に神戸製鋼所に入社。2003年に「名代 宇奈とと」の経営権を買い取り、G-FACTORYを設立、代表取締役社長に就任。16年に東証マザーズに上場
日経ビジネス電子版

新型コロナウイルス禍の外食産業で唐揚げ専門店や焼き肉業態が堅調に推移する中、次の鉱脈として注目を集め始めているのがウナギだ。うな丼やうな重など、丼メニューを中心とした「ウナギファストフード」で伸びているのがG-FACTORYが運営する「名代 宇奈とと」。2020年6月時点で14だった国内店舗はライセンス店の展開を始めたことで1年で61店に増えた。

既存の飲食店で宇奈ととのメニューを販売する「二枚看板戦略」が当たった。ウナギのファストフードはどこまで浸透するのか。G-FACTORYの片平雅之社長に聞いた。

――G-FACTORYの本業は飲食店支援やコンサルティングのイメージでしたが、コロナ禍ではウナギ業態の拡大が目立っています。

「現在、当社の運営しているウナギ業態・宇奈ととは関東や関西圏を中心に国内61店舗(21年6月時点)を展開しています。20年6月までは直営店舗のみの14店舗だったことを考えると、大きく店舗数が伸ばせたのではないかと実感します」

「21年1~6月期のウナギ業態の売上高は20年同期の3億7500万円から1200万円減の3億6300万円となってしまいました。とはいえ、高価格帯のすし店や焼鳥店などを展開している『職人業態(M.I.T)』の売り上げが前年同期比で33.4%落ち込んだことと比べればまだいいほうだと思います。やはり高級業態はアルコールが提供できないと、どうにもならない。今後しばらくはウナギ店に力を注ぐつもりです」

――そもそもいつごろからウナギ店を展開しているのですか。

「当社の始まりは私が2003年に宇奈ととの経営権を買い取ったことがスタートなので、祖業ということになりますね」

――主力業務が飲食店へのコンサルティングなのでそちらがスタートだと思い込んでいました。買収して事業を始めたのですね。

「もともと、私の仕事の取引先が運営していた事業だったのですが、『宇奈ととは撤退を考えている』と取引先の経営者の方が売却を検討されていることを聞きまして、それに私が興味を持ったことが買収のきっかけでした」

――もともと宇奈ととは拡大戦略を取っていた業態だったのですか。

「いいえ。コロナ前までは飲食店の経営サポート事業に力点を置いていました。そんな当社が飲食店事業に本腰を入れてしまっては、顧客でもある飲食店と競合関係となってしまいますから、宇奈ととは直営のみ14店舗の状態が長く続いていました。それ以上増やすつもりもありませんでしたが、コロナ禍によってニーズが急増したので拡大に転じたというわけです」

「当社の顧客は経営サポートをしている居酒屋などですが、コロナ以前はほとんど店内飲食にしか対応していなかったお店が、急ごしらえでテークアウトやデリバリーを始めても苦戦してしまう、という事例が多かったのです」

「そんな中、宇奈ととはコロナ前に2~3割だったテークアウト・デリバリーの売り上げに占める比率が、コロナ禍以降は一時6割にまで急成長しました。現在でも、店内飲食と持ち帰り・デリバリーの比率はそれぞれ5割ずつ程度です」

「コロナ禍にあっても需要が底堅い宇奈ととを知ったお客さんが『うちでもやってみたい』ということでお声がけをいただいたので、ライセンス契約を結んで拡大する方針を取りました。当社としても自社のリソースを使って宇奈ととの出店を進めるということは難しかったので、20年夏以降に開店した宇奈ととはほとんどがライセンス店です」

「弁当のほうがおいしい」という珍しい存在

――ウナギはうがった見方をすれば「夏だけ」というようなイメージを持っていましたが通年でニーズがあるのですね。

「ウナギとは、ある種の特別感のある食材、料理の1つだと思っています。なおかつ、『弁当のほうがおいしい』というイメージを持てる珍しい商材でもある。店頭で調理されたものが、蓋をされることで適度に蒸され、たれも染みてくる。家族へのお土産で買っても喜ばれますよね。これが2000円くらいするものであれば、金銭的なハードルもありますが、宇奈ととであれば1番人気の『うな丼ダブル』であっても1000円なので、価格設定としても親しみやすかったのではないでしょうか。ちなみに、最も安価な丼ぶりメニューの『うな丼』と『うなめし(並)』は550円です」

「ただ、もちろん本物志向で職人が焼き上げるウナギが食べたいのであれば際コーポレーションさんの『にょろ助』のような業態のほうがニーズにあっているかもしれません。ウナギとひとくくりにしないで色々な業態があっていいのではないでしょうか」

――取材の前に、北千住駅(東京・足立)近くにある宇奈ととで食事してきました。期間限定の「うなめしギガ増し+」(1100円)を注文しましたが、配膳まで3分とかからず、牛丼並みの早さでした。このスピードなら調理工程はかなり簡略化されていますよね。

「オペレーションはかなりシンプルです。加工して納品されるウナギを切って、炭火で焼いて、盛り付ける。これだけです。最短で3日間の研修を受ければ営業を始められます」

――宇奈ととの営業利益率はどのくらいですか。

「コロナ前は10%ほどでした。コロナ禍が収束すれば、またそのくらいの水準を目指せる可能性はある業態だと思います」

――店に行った際、「うな丼ダブル」を頼もうとしたら、従業員の方に「うなめしギガ増し+」を薦められたので、こちらを注文しました。「うな丼ダブル」よりも、ウナギの端材を使っている「うなめし」のほうが、原価率が低いから薦められたのではないか、と邪推してしまいました。

「原価率でいえば、うなめしギガ増し+のほうがウナギの量は多く、また原価率も5割ほどになります。一方のうな丼ダブルは4割強です。ちなみにギガ増し+は1年のうち、晩夏と早春だけ提供する期間限定商品です。端材になっているウナギの保管期限もありますから、還元セールということで出している商品なんですよね」

宇奈ととのうなめしギガ増し+。晩夏と早春だけ提供する期間限定商品

――そうとは知らず、失礼しました。他のメニューに目を向けると、アルコール類(9月15日現在は提供停止中)やウナギを使った串焼き(くりから)、おつまみのメニューなど居酒屋のような料理も20品以上ありました。居酒屋業態としても運営されているのでしょうか。

「今、コロナ下であっても底堅い需要のある業態なので、店内飲食のお客さんも呼び込むことができればさらに売り上げも伸びるのではないかと考えています。居酒屋メニューもウナギを使った料理が半分以上で、その他は焼き鳥やおつまみメニューといったオペレーションの負担が増えにくいものでそろえています」

――焼き鳥だと焼き場が共用できるということですね。

「そうです。焼き鳥とウナギは相性がいいんですよ。設備の導入は『宇奈とと』の看板や『のぼり』くらい。ライセンス店の中には焼鳥屋にウナギ屋の看板をプラスした二枚看板のようなお店もあります。これなら、オペレーションや設備投資の負担はそれほど大きくなく、焼き鳥の需要にウナギの需要をシンプルに加算できるわけです。そうなれば、失敗するリスクも低くなる。既に客数が確保できている飲食店でウナギメニューを増やすだけなので、店舗の訴求力を単純に強化できます」

「焼鳥屋は全国的にも多い業態ですし、加工されたウナギを焼くほうが鶏肉を焼くよりも楽なんですよ。あぶるだけだから(笑)。今後の拡大戦略も『二枚看板』のようなコラボレーションスタイルや、いわゆるデリバリー・テークアウト専用ブランドとしての『ゴーストレストラン』で推し進めていくつもりです」

焦らない、ブームで終わらせない

――逆に北千住のお店のような専門店を増やすつもりはないのですか。

「そこはもう少し慎重に考えたいですね。『ウナギの専門店』にどれだけの需要があるのかは我々も予測できていません。ランチタイムや持ち帰り・デリバリーが強くても、ウナギを使った居酒屋メニューが夜業態として受け入れられるのかは未知数です」

「フランチャイズ、ライセンス店舗として拡大するにしても、課題はあります。例えば、ある居酒屋の月商がコロナ前の600万円から2割減の480万円になっているとしましょう。そこで、宇奈ととのメニューを既存店にプラスアルファするだけのコラボ店舗にするのであれば元の屋号は維持したまま『ウナギのメニューもありますよ』というアピールができるので、低リスクで回復を目指せます。一方で、お店の屋号やメニューも全てウナギ専門店にしたからといって元の600万円に戻せるかは読めません」

――ファストフード業態は唐揚げ、チキンバーガーなど、コロナ禍で参入が相次いでいますが、ウナギは参入障壁の点で懸念はないのでしょうか。

「原材料を安定的に供給するには取引のノウハウも信用も必要なので、その点では鶏肉よりもハードルが高いでしょう。ただ、当社は曲がりなりにも03年から20年近くウナギ専門店として経営し続けた伝統と信用があります。ウナギの原産地は中国ですが、コロナ前までは年2回は協力工場の視察も行っていましたし、今も取引先の商社を通じてチェックを続けています」

「コロナ前には都内を中心に中堅のウナギ専門チェーン店が複数あって、インバウンドバブルを謳歌していましたが、今では下火になっているようです。当社はインバウンド需要狙いではなく、当初から『ファストフード』を前面に押し出していたのがよかったのかもしれません」

オレンジの下地に屋号、ウナギの模型にキャラクターと、宇奈ととだと一目で分かる外観(写真は直営の北千住店)

――宇奈ととが現状抱えている課題は何でしょう。

「20代の客層が少ないことですね。30代以上のビジネスパーソンや40代以上の主婦(夫)からは店内飲食、持ち帰りのニーズが高いのですが、若者は『安くてボリュームがある』というような、がっつり系の食事を好みますから。そうなると、牛丼のほうが価格は安く、1000円を出せばステーキも1人焼き肉も楽しむことができるので、そちらにお客さんが流れてしまいますよね。とはいえ、客層が異なるのでうまくすみ分けができていると思います」

――最終的に何店舗まで増やしたいのですか。

「当面は22年までに100店舗、と考えてはいますが、最終的にどこまで店舗網を拡大させるのかはまだ決めていません」

――ニーズがあるのなら競合のいないうちに急拡大させることも戦略の1つかと思いますが。

「市場規模が読めていない状態では急拡大を志向することはできません。それに一気に伸ばそうとして、撃沈してしまったブランドは外食では少なくない。例えば、『二枚看板店』となるための条件に『路面店であること』というものがあります。店舗を増やすためだけなら、いわゆる2階以上の『空中階』でも店舗を設置できるでしょう。そうすれば、我々もライセンス料を増やすことはできます」

「でもそれではきっと、いっときのブームに終わってしまうでしょう。幸い、ウナギという食べ物は日本人の食文化として根付いています。焦ることはありません。宇奈ととの事業戦略はライセンス店に原材料を卸して、消費者に届ける『B2B2C』です」

(日経ビジネス 神田啓晴)

[日経ビジネス電子版 2021年9月15日の記事を再構成]

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