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ヤフーとLINE、統合後の経営会議は「毎週7時間」に

日経ビジネス電子版

経営の統合を発表したヤフーとLINE。米国の「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)や中国のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)など、海外のメガプラットフォーマーに続く第三極を狙う日の丸プラットフォーマーは、どこで勝負を挑むのか。ヤフーとLINEの親会社となる新生Zホールディングスの共同最高責任者となる川辺健太郎・ヤフー社長CEO(最高経営責任者)とLINEの出沢剛社長に、これからの戦い方を聞いた。

――19年11月の発表から1年4カ月。ようやく経営の統合が実現しました。今あるサービスの統廃合も効果の1つとして期待されています。いかに進めていくのでしょう。

川辺健太郎氏(以下、川辺氏)「ヤフーとLINEのサービス統合に向けた意思決定機関として『プロダクト委員会』を新たに立ち上げました。週に一度開催します。まさに今日(※取材日の3月4日)、第1回をやってきました。

プロダクト委員会を含めた経営会議では、朝の10時から4時間話し合いました。人工知能(AI)を中心に、今後5年間で5000億円を投資すると発表しました。その中でこの2~3年で何をするかという話や、次の決算発表で話せそうな議題もありました」

出沢剛氏(以下、出沢氏)「最後のフリーディスカッションですごく重要な意見交換ができました。今日は初回ということもあり、顔合わせも兼ねて久しぶりに対面で話せたことも大きかった。これまではずっとリモートでのコミュニケーションでしたから」

川辺氏「みんなせきを切ったように話して議論は盛り上がりました。統合を表明したものの、公正取引委員会による結合審査の期間はもちろん、(LINE株の)TOB(株式公開買い付け)を実施した期間も話せず、いよいよ本格的に話せるようになりました。

今週で緊急事態宣言が解除されれば来週以降も対面を継続するつもりでしたが、予定を変更せざるを得ません。是々非々でやっていきます。

来週以降は午前10時から午後5時までとなりました。(ランチタイムを挟みつつ)7時間みっちりです。このスピードで意思決定していきたいですね」

――1日の会見では決済サービスの「LINEペイ」を22年4月に「PayPay(ペイペイ)」に統合する一方、「ヤフーニュース」と「LINEニュース」はそれぞれ残すと発表されました。

出沢氏「すべてをスマート化すればいいとは思いません。サービスが2つあるものを1つにするのがゴールではないですから。ユーザーにとってそれぞれ価値があり、たくさんの人に使ってもらえるのであれば、サービスを減らす必要はありません」

川辺氏「赤字事業であれば、どちらかに統合するというのはあるかもしれません。でも、現状ではヤフーニュースもLINEニュースも黒字です。無理に統合しても、1+1が2にならず、ユーザーは減るだけです」

「出前館」活用したラストワンマイル戦略

――2023年度に2兆円の売り上げを目指すうえで、けん引役となるのはEC(電子商取引)やフィンテックでしょうか。ヤフーショッピングやペイペイモール、そしてLINEショッピングを活用した相互送客に加え、LINEグループの出前館を活用した「ラストワンマイル戦略」も面白いですね。

出沢氏「出前館の活用はまだ構想段階にすぎませんが、今回の統合によるシナジーのポイントの1つと考えます。LINEもショッピングはやっていますが自社だけでは活用は難しい。ヤフーのECと連携していくことで、新たな価値を提供していきたい」

川辺氏「お客様にとって、モノによっていつ欲しいのかは変わってきます。翌日ではなく、『今すぐ欲しいもの』もある。そうしたニーズに応えていくためにも、出前館が持つデリバリー網は魅力的です。

昨年にヤマト運輸さんと配送の連携で提携しましたが、冷蔵庫など大きなお買い物の配送はやはりヤマトさんでしかできません。一方、小型の商品ですぐに欲しいものなどは、出前館が持つデリバリー網との相性がいい。機能分化し、物流にも選択肢を与えてお客様の利便性向上につなげていきたいです」

――グループにはZOZOや、アスクルが運営する「LOHACO」などもあります。

川辺氏「物流網をグループで活用して、全体に対してシナジーを出していきたいです」

GAFAやBATに勝つキーワードは「防災」

――グローバルで第三極を目指す目標を掲げられています。競合するメガプラットフォーマーは世界ですでに大きな存在となっています。日本初のプラットフォーマーとしてどのような強みを発揮して勝負していくのでしょうか。

川辺氏「1つは災害分野です。災害大国日本で、ヤフーとLINEは様々なサービスを提供してきました。住んでいる場所など、一人ひとりにパーソナライズされた情報を提供するというのは、AIと相性がいい。ただそれには、件数を積んで精度を上げていく必要があります。GAFAのような米国企業には、それほど精度を上げていくことはできないのではないでしょうか。

日本は台風被害が深刻な年もありましたが、昨年は日本に台風の上陸は1つもありませんでした。その半面、アジアでは台風被害が大きかった。地震や火山、台風。東南アジアなどは、日本と同じ災害が起こりやすい。ヤフーやLINEが提供するサービスを使ってもらいやすい。

ただ、災害時だけに使うのではなく、日ごろから使ってもらうアプリとして活用されなければいけません。『(新型コロナウイルス接触確認アプリの)COCOA』みたいにいざというときに使えないではダメです。いかに日常的に使ってもらえるかが課題です。

LINEはタイやインドネシアなど海外ではメッセンジャーアプリとして非常に強い。ヤフーが日本で培った防災の技術を、東南アジアのLINEに載せて展開していきたい」

――日本ではヤフーとLINEがそれぞれ、多くの自治体と防災で協定を組んでいます。海外展開する際には、こうしたきめ細かな対応は難しいのではないでしょうか。

川辺氏「やり方はいくつかあると思います。例えば、世界規模で災害予測をするところと組む。あるいは日本の行政の仕組みを含めて防災プラットフォームを『輸出』するのも一手ですね。発電システムを輸出していたように、オールジャパンで提案していくのも可能性としてはあると思います」

出沢氏「タイや台湾では、すでにLINEを活用している行政機関はあります。なので、素地はある。東南アジアなどの行政機関の方が、むしろ能動的にLINEを活用している印象があります」

――「ヤフー」の名称は権利上、海外では使えません。海外ではLINEブランドを中核に拡大していくのでしょうか。

川辺氏「使えるアセットからしてLINEの名前でいくのが一番いいとは思っています。ただ、せっかく大きな体制になったので、新たなグローバルサービスを自社開発で提供していきたいなとは思っています。M&A(合併・買収)を絡めて新しいブランドを獲得していくことも視野に入れています」

――会見ではソフトバンクグループ(SBG)の「ビジョン・ファンド」の投資先とも連携していきたいと発言されました。SBGや事業会社のソフトバンク、韓国のネイバーといった親会社に加え、ZOZOやアスクルなど多くの上場子会社も存在します。いろいろと連携を図れるプラスの面もありますが、逆にグループ内での調整などで身動きが取りづらくなるマイナスも考えられます。

川辺氏「独立した上場企業なので、そこはきちんと自分たちで決めていく。それぞれの会社が独立して決めていくということに尽きます。ただ、グループ内でシナジーが生まれる部分は積極的に活用していきたい。複雑化するというより、話し相手がたくさんいるというイメージです」

(日経ビジネス 白壁達久)

[日経ビジネス電子2021年3月5日の記事を再構成]

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