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コロナ禍が追い打ち 葬儀業界、再編避けられず

公益社は参列できない人が葬儀の様子を見られるサービスを始めた
日経ビジネス電子版

新型コロナウイルスの感染拡大で葬儀の規模がおしなべて小さくなった。安定成長を期待した事業者の新規参入で競争が激化したところに追い打ちをかけた。零細業者が多く、利益を上げにくい事業環境。業界の再編は必至だ。

「コロナ禍の前は参列者が40人前後の葬儀が多かったが、今では10~20人前後のことが多い」。葬儀大手の公益社などを傘下に持つ燦ホールディングス(HD)の播島聡社長は葬儀の変化をこう話す。

「密」になりやすい葬儀への参列を控える動きが顕著になってきたのは、国内での感染が増え始めた2020年春だった。緊急事態宣言の発出や都道府県をまたぐ移動を自粛する動きも相まって、参列者が少ない葬儀が増えた。式の小規模化は提供する食事や返礼品の減少に直結するため、葬儀業者は大幅な売り上げ減に見舞われた。

さらにホテルなどで行う1000人以上が集まるような大規模な社葬やお別れの会もほとんどが中止や延期に。燦HDの20年4~6月期は葬儀施行の売り上げが前年同期比16.9%減。緊急事態宣言が解除された後の同年7~9月期も同15.4%減だった。公益社は6月に実際の葬儀に参列できない人がオンラインで葬儀の様子を見られる「オンライン葬儀」のサービスを始めたが、売り上げ減を補う効果は限定的だ。

「葬儀の小規模化は以前から始まっていた。コロナ禍で、変化のスピードが一気に上がった」と播島社長は指摘する。親族だけが参列する「家族葬」や、通夜を行わない「1日葬」などの小規模な葬儀を選ぶ割合が、以前から徐々に増えていたという。その流れは今後も続き、コロナ禍が収束しても「コロナ前の規模には戻らない」(播島社長)との見方が広がっている。

そもそも葬儀市場は、40年にかけて死者数が増加基調にあるとの見通しの下、しばらくは年率1%程度で右肩上がりの成長が続くと見込まれてきた。だが、コロナ禍で流れは変わった。葬儀業界のコンサルタントである小泉悟志氏は「20年は前年比で市場規模が15%近く落ちたとみられる。今後も葬儀業界全体が上り調子になることは考えにくい」と話す。

国内の死者数の推移(出所:厚生労働省「人口動態統計」、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所の推計[死亡中位]から作成)

小規模事業者を大手が吸収

葬儀市場の成長を見込んだ新規参入が増える一方、インターネットを活用する仲介サービスが普及し、価格競争が激しくなっていた。そこにコロナ禍で急激に進んだ葬儀の小規模化が追い打ちをかけた。葬儀事業者は国内に8000超あるが、そのうち5000以上は従業員が10人未満の事業者だ。市場の回復が見込めない状況の中、「体力のない事業者を大手が吸収する事例が既に出てきている。M&A(合併・買収)などの業界再編が進みそうだ」(小泉氏)。

燦HDの播島社長も「M&Aは今後増えるだろう」と同意見で、「我々も成長戦略の一つとして捉えている」と話す。さらに、墓や相続などに関して遺族をサポートする事業にも手を広げて厳しい経営環境を乗り越える考えだ。葬儀の形だけでなく、業界の姿も転換期を迎えている。

(日経ビジネス 藤中 潤)

[日経ビジネス電子版2021年2月3日の記事を再構成]

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