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「もうからなくなるから、値引きはダメ」は本当か

古田土満「会社を潰す 社長の財務!勘違い」(1)

「古田土式・経営計画書」を武器に、多くの中小企業を顧客に抱える古田土会計の代表、古田土満氏が、経営者は知っておくべき財務・経営の考え方を分かりやすく指南する。著書『会社を潰す社長の財務!勘違い』(日経BP)の一部を抜粋して紹介したい。 

どれだけもうかっているかをシンプルに表す「粗利益」

古田土満(こだと・みつる) 1952年生まれ。76年3月、法政大学経営学部卒。公認会計士、税理士。監査法人勤務を経て、83年1月に東京・江戸川で古田土会計士税理士事務所(現古田土会計)を開業。「古田土式・経営計画書」を武器に、経営指導と会計指導を両方展開。約2300社の中小企業を顧客に抱える。著書に『小さな会社の財務 コレだけ!』(日経BP)など

値下げをすると粗利益率が下がってしまい、もうからなくなるから値下げをしないという社長がいます。これは大きな勘違いです。そもそも売れなければ粗利益は稼げません。固定費が同じであれば値下げして販売しても粗利益が増えさえすれば経常利益は出ます。時には値下げを断行して粗利益を増やす戦略を取らなくてはいけない局面があるのです。

粗利益を増やすために、販売数を増やす戦略を取るのか、それとも価格を上げる戦略を取るのかが大きな分かれ目になります。このときの大きな判断基準になるのが粗利益率です。

経営者が重視している数字に「粗利」(あらり)があります。変動損益計算書(※変動P/L)では、「売上高」から「変動費」を差し引いたものが「粗利益額」。それを略して「粗利」と呼びます。

(※一般的なP/Lは、売上高-売上原価=粗利、粗利-販売管理費=営業利益、営業利益+営業外収益-営業外費用=経常利益だが、ここではシンプルに理解するために、売上高-変動費=粗利、粗利-固定費=経常利益、という変動P/Lの考え方を取る)

決算時に示す通常のP/Lに示される利益には、このほかにも「営業利益」「経常利益」「税引き後利益」など、いくつか種類がありますが、それらの中で、会社の事業がどれだけもうかっているかを最もシンプルに表すものがこの「粗利」です。

変動P/Lでは、「粗利」から固定費を差し引くと「経常利益」となります。固定費の中に、営業外収益と営業外費用も入れて考えるためです。

どれも重要な利益ではありますが、人によって、また状況によってどの利益を重視するかは違ってきます。しかし、経営の目標に、この粗利を増やすことを挙げる中小企業の社長は多いはずです。

粗利額を増やすときの重要な指標「粗利益率」

では、「粗利」を増やすには、何をすればいいでしょうか。

これも簡単です。変動P/Lを見ればすぐ分かりますが、「売上高」そのものを伸ばすか、「変動費」を減らすか、の2択です。後者は仕入れ単価や材料費などを削るいわゆるコストダウンですね。このどちらかの手を打てば粗利益額が増えます。

ここでは、こうした粗利益額を増やすときに重要な役割を果たす「粗利益率」(粗利率)という指標に注目してみます。

粗利益率が1%上昇するだけで利益が大きく変わる

粗利益率を1%上げるとどうなるか?

この粗利益率と粗利益額の関係を考えてみましょう。具体的には、粗利益率が1%上がると、どのくらい粗利益額が増えるかを見ていきます。

売上高1000万円、変動費500万円、固定費400万円、経常利益100万円の会社で計算してみます。

この会社では、売上高から変動費(売上原価)を差し引いた粗利は500万円です。売上高が1000万円ですから、この会社の粗利益率は50%となりますね。もし粗利益率が1%上がるとしたら、粗利益額は510万円となり、もともとの500万円と比べると2%増えることになります。

粗利益率を1%上げて、粗利益額が2%の改善……。1%の改善が2%の改善になっただけで、たいしたことがないように思えるかもしれませんが、会社の売り上げ規模が大きくなれば大きな改善になりますし、粗利益率の低い会社では、この傾向は強くなります。

また、ちょっと極端ですが、売上高が1000万円、経常利益が100万円と、最初の例と同じで、変動費が750万円、固定費が150万円、粗利益率が25%という会社で考えてみましょう。

この会社の粗利益額は250万円です。この会社で粗利益率が1%上がると粗利益率は26%となり、粗利益額は260万円となります。

10万円アップという点では最初の例と同じですが、もともとの粗利益額が小さいので粗利益額は4%の改善になります。このように粗利益率が低い会社ほど、粗利益率を上げることによる改善効果は高くなるわけです。

さらに大事なのは、粗利益率が1%上がると、営業利益や経常利益がぐっと増えることです。これを最初の会社で見てみましょう(売上高1000万円、粗利500万円、経常利益100万円)。

この例では粗利益率が1%上昇すると粗利益額は510万円でしたね。固定費は400万円ですから、経常利益は110万円になります。粗利益率を1%上げると、経常利益は100万円から110万円へと10%も増えることになるのです。 

さらに売り上げ規模が大きく、粗利益率が低い会社を考えてみます。

例えば、売上高が5000万円で粗利益率が10%、粗利益額500万円、固定費が400万円で経常利益が100万円としましょう。

この会社では粗利益率が1%上がって11%になると粗利益額は550万円になります。金額は10%の増加です。固定費は400万円のままですから経常利益は100万円から150万円になり、50%アップになります。

私たちはよく中小企業の経営者を対象に勉強会を開催しますが、その場で電卓をたたいてこの数字を出してみると「粗利益率を1%上昇させるだけで経常利益がこんなに増えるのか」と皆さん驚きます。

粗利益率が違うと、取るべき戦略も違う

このとき、粗利益率の高い業種と低い業種では取るべき戦略が違ってくることを覚えておきましょう。そもそも粗利益率が比較的高い製造業などの場合は、「量」の戦略が大事になります。

粗利益率はある程度確保できているので、営業力によって商品数や顧客数を増やし、売り上げを増やすことで利益を増やす戦略を取ることが有効になります。

一方で、粗利益率が低い、小売業や卸売業といった業種の場合は、まず「価格」戦略を考えてみることが重要です。付加価値を高くして客単価を上げたらどうなるか。また、変動費(売上原価)をもっと下げられないかを考えることで、まずは粗利益額の確保を目指しましょう。

ただ単純に「粗利益率を1%上げよう」というだけではその効果がよく分かりませんが、P/Lの仕組みをしっかりと頭に入れ、粗利益額や経常利益がどれだけ改善されるかまで押さえておくことで、その効果を実感できます。

さらに、こうした理屈を社長だけでなく、社員全員で共有できれば、社員一人一人が顧客に少しでも高く買ってもらって粗利益率を上げる努力をしたり、逆に販売数を増やすために値下げを含めた戦略を考えて行動するようになったりと、社員全員が一丸となって目標にまい進できるようになるのです。結果としてもうかる会社に変わっていきます。

[書籍「会社を潰す社長の財務!勘違い」から再構成]

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