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JTBやスカイマークが減資、体面より実利 世論も軟化

日経ビジネス電子版

JTBが23億400万円の資本金を1億円に減資し、「中小企業」となる。コロナ下で逆風が吹く業界の大手企業で相次ぐ減資。税制上の優遇を得ようとしているためだ。危機に際し、生き残りの手段としてやむなしとの見方がある一方、税制のゆがみも浮き彫りになっている。

JTBは3月末に減資を実施する。2020年4~9月期は782億円の最終赤字。国内店舗の25%を閉鎖し早期退職や自然減で6500人の人員を削減する。資本金で中小企業の区分に入り、税制上の優遇を受けたい考えだと受け止められている。

新型コロナの影響が長引く中、苦肉の策として「中小企業」になる大手の動きが目立つ。格安航空会社のスカイマークは昨年12月、資本金を90億円から1億円に減資した。資本金を取り崩すことで利益剰余金の欠損を補填する。居酒屋「庄や」を展開する大庄は20年8月に86億円を、回転ずしチェーンのカッパ・クリエイトは21年2月に98億円を、それぞれ1億円に減資している。

コロナ禍で資本金1億円に減資した企業

中小企業となることで得られる優遇措置は複数ある。代表的なものは法人事業税の一種である外形標準課税が免除されること。04年に導入された外形標準課税は赤字企業に対しても一定の税負担を求める仕組み。制度が適用されるのは資本金1億円を超える企業のみで1億円以下の中小企業は支払う義務がない。制度の導入以降、減資して外形標準課税を免れることが節税の手段になると指摘されるようになった。

とはいえ、大企業が大幅に減資して税負担を軽減する動きは限定的だった。「資本金や資本剰余金は聖域で、大企業がむやみに触るのは良くない雰囲気があった」(帝国データバンク情報部の太宰俊郎氏)ためだ。外資系企業の日本法人などが減資する例はあったものの、世間体を気にせず、実利を求める企業の手法と受け止められていた。

シャープが潮目を変えた

潮目が変わったのは15年。シャープが1200億円超の資本金を1億円に減資することを経営再建案に盛り込もうとしたことがきっかけだった。

中小企業向けの優遇措置を大企業が活用しようとしたことに対し、当時の宮沢洋一経済産業相が「企業再生としては違和感がある」と指摘するなど批判が噴出。計画は断念に追い込まれた。しかし、シャープの減資報道は一種のアナウンスメント効果になった。大手企業も活用を検討したことで、選択肢の一つになり得ると認知された。

そこで起こったのが新型コロナの感染拡大。外食や航空、旅行の業界が大打撃を受け、ネット上では「生き残るためには仕方ない」「法律に違反しているわけではない」といった擁護の声が相次ぐ。政治家からも目立った批判の声は上がらない。世論の忌避感は薄れ、減資が今後も相次ぐ可能性はある。

減資は日本の税制のゆがみも浮き彫りにした。外形標準課税は行政サービスを受けている以上、赤字企業も税を負担すべきという考え方に基づいてできた制度。大企業はより多くの社会インフラを享受しており、その分の納税義務も負うのが本来の姿といえる。

未曽有の危機下で雇用を守り、社会を維持していくためにはやむを得ない緊急措置もあるだろう。だが、コロナ後には何らかの歯止めが必要ではないだろうか。

(日経ビジネス 白井咲貴)

[日経ビジネス電子版2021年3月3日の記事を再構成]

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