コート着こなし、キャサリン妃に学ぶ 襟やベルトで差
宮田理江のおしゃれレッスン

冬に出番が多いコートは、誰もが着ているからこそ、スタイリングで差をつけたくなります。襟を立てたり、ベルトを使ったりといった小技だけでも、着映えを格上げできるから、テクニックを磨く価値大です。英王室のウィリアム王子の妻、キャサリン妃が愛用する英国ブランド「KATHERINE HOOKER(キャサリン・フッカー)」は格上げコーディネートで頼れるお手本。年末年始のお出かけや新年のお仕事ルックにも参考になる着こなしのコツを、「襟、ボタン、ベルト」の3スポットに絞って磨いていきましょう。
襟立てでクール度アップ りんとした細長イメージを強調

コートの襟を立てるだけでムードが変わります。襟立てをレパートリーに加えると、着こなしのバリエーションがぐっと豊かに。ポイントは「首に近いボタンは留めない」。胸元あたりはボタンを開けるテクニック。きれいなVネックを描くように、ボタンを開けて、内側のトップスやネックレスを少しのぞかせることで、すっきりした印象に仕上がります。

襟立てと一緒に使いこなしたい小技に、「前開け」があります。寒い日は別ですが、正面ボタンを全開にすれば、コート特有の「くるまれ感」を遠ざける効果が見込めます。前を開けるとだらしなく映るという心配もありそうですが、襟を立てれば、りりしい表情が備わるから、ルーズに見えません。開けたスペースから、内側に着た服をのぞかせると、さらにまっすぐな縦落ちイメージが強まります。コートとは色の異なるワンピースがすっきりした「I」の字ゾーンを描き出してくれます。

冬のコートルックを、すっきり縦長に見せるうえでも、襟立ては効果的です。あご回りをカバーする感じで、襟高のいっぱいまで立てて。風よけや防寒の面でも頼もしい着方です。正面のボタンを留めないで、深く打ち合わせると、さらにシャープな見え具合に。タイトめに装うことによって、襟立てとの相乗効果で、コートルック全体の縦長感が強まります。細身のパンツと組み合わせれば、いっそうスレンダー感が際立つ仕掛けです。
前をきっちり締めて、ドレスライクなエレガント姿に

今度は前を閉じる着こなしパターンです。前をきちんと締めると、お仕事ルックにふさわしい端正なたたずまいに。襟形や打ち合わせがスーツ風のモデルは、ドレッシーに仕上がります。ロングコートの場合、だぼついて見えないよう、ウエストに絞りを加えたシルエットを選ぶと、ベルト無しでもすっきりシルエットを演出できます。両方のポケットに手を差し入れた冬のしぐさもウエストのくびれを際立たせる効果を発揮しています。

襟を折り返さないスタンドカラー式の場合、正面のボタンを全部留めると、コンパクトな姿にまとまります。このシルエットの持ち味を生かすには、スレンダーなフォルムを選ぶのが好判断。目指すイメージは「ワンピース」。アウターという常識を離れて、欧米でおなじみの「コートドレス(ワンピースのようにコートを着る)」という意識でまとって。コートを1枚だけで着ているようなスタイリングなら、着ぶくれとは無縁の見え具合に仕上がります。

前を閉じると、ほとんどコートしか目に入らない状態になるから、冬はアウター選びが重要になってきます。無地コートの場合はディテールに工夫を施したタイプが魅力的です。視線を散らす効果が大きいのは、襟、ポケット、袖口といった、身頃(みごろ)から離れたポジションに配したディテールです。これらのスポットに異素材や別色をあしらうと、コートルックに動きが加わります。襟、ポケット、袖口につやめき素材を配すると、エレガントなムードに。冬ルックに不足しがちな光沢を補っているのも巧みなアレンジです。
ベルトの巻き方次第でムードを自在にスイッチ

コートにつきもののパーツといえば、ベルトです。とりあえずウエストに巻いている感じの人を見かけますが、実は巻き方次第で、コートの着映えが様変わりするマジックツール。手軽なムードメーカーにもなってくれます。英国調のチェック柄コートは同じ色と素材の共布ベルトでさらに品格アップ。きつめに絞って、くびれ感を引き出しました。あえてボタンをきっちり留めないで、ベルトでキュッと絞ると、裾が遊んで、こなれた着映えに整います。

ベルトは「巻く」というイメージが強いパーツですが、コートルックの着こなしでは「垂らす」という使い方も便利です。結んで余った端の部分にもしっかり表情が生まれます。共布ベルトでウエストマークして、装いのムードも引き締めて。一方で、長めに余らせたベルト端を無造作に垂らして、くだけた表情も引き出しています。「カッチリ×伸びやか」の緩急コンビネーションがベルトだけで演出できます。
キャサリン妃愛用ブランドならではのタイムレスな魅力

「キャサリン・フッカー」のコートはクラシカルなたたずまいが支持されています。サステナビリティー(持続可能性)への意識が高まり、目先のトレンドに流されない「タイムレス」が重んじられるようになったのも、人気の理由。ファッションリーダーとして有名なキャサリン妃も認める本格的なテーラリング(仕立て)が持ち味です。40以上の英国ブランドをえりすぐって集めている「ヴァルカナイズ・ロンドン」(東京・南青山)では、「キャサリン・フッカー」をはじめ、正統派ブリティッシュの装いを感じさせるアイテムが提案されています。
冬ルックの主役となるコートですが、サッと羽織って済むせいか、意外と「手抜き」の着方になっていることも。今回取り上げたようなアレンジを取り入れるだけでも、見た目の印象がガラリと変わります。せっかくのコートを最大限に生かすために、「襟、ボタン、ベルト」を生かして、自分好みの「ひねり」を加えてみてはいかがでしょうか。
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長く連載してきた「宮田理江のおしゃれレッスン」は今回で最終回となりました。読者の皆様が自分らしいファッションを選ぶうえで少しでもお役に立てたなら幸いです。長い間、本当にありがとうございました。また、どこかでお会いしましょう。
(おわり)
ヴァルカナイズ・ロンドン
https://vulcanize.jp/products/list?category_id=21

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