パリの老舗アイスクリーム 旬の素材シンプルに

夏ならユズ味のヨーグルトやキイチゴのシャーベット、秋は栗味、冬は濃厚なブラックチョコレート。パリ育ちのフランソワ・ボーさんが絶賛するのはノートルダム寺院裏の小さな島、サンルイ島にある店「ベルティヨン」のアイスクリーム。シングルのコーンで3ユーロ(約410円)だ。
フランスはアイスクリームの生産額や消費額が欧州一。生産額は2020年にイタリアを抜き12億ユーロ、消費額は21年に12億2千万ユーロに達した。
店頭販売では「職人的な、または手作りの」という意味の「アーティザナル」と呼ばれるジャンルのアイスクリームが不動の人気だ。
1954年創業の「ベルティヨン」はアーティザナルの老舗中の老舗。サンルイ・アン・リル通りの本店では着席してアイスが味わえるほか、サンルイ島にある他の飲食店でも、ベルティヨンのアイスクリームをほぼ提供している。
パリで最古のアーティザナルは「レモ」。1947年創業でパリ東端の12区にある。ユズやライチ、栗、桃など150種類はくだらない。
百貨店「ボンマルシェ」の裏にある55年創業の「バック・ア・グラス」も人気の店だ。人工の香料や色素などを使わず砂糖の量は最小限。厳選したフルーツの甘みを生かした伝統的製法を使う。
一方、新しいアイスクリーム店も増え、産地へのこだわりや斬新なアイデアで注目を浴びる。その1つ「グレイズド」では、キャラメル味のポップコーンにコショウをきかせた「ポーン・コップ」を提供。コーヒー味ベースにカルダモンを加えた「グリーン・ベルベット」など個性的な味が売り物だ。
2012年創業の「ファブリック・ジヴレ」はフルーツやナッツなど素材の味を存分に引き出したアイスクリームを提供している。創業者ジェレミー・リュネルさんの出身地、仏南東部のローヌ渓谷やアルデーシュ県で採れる食材を中心に使う。
ただシンプルに旬の素材を味わうならベルティヨン。イチジク味のアイスクリームは、まるで果物そのものを溶かしたような濃厚さを堪能できる。
(パリ=吉田知弘)
[日経MJ 2022年5月30日付]
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