ベートーヴェン頌(10)グスタフ・クリムト「ベートーヴェン・フリーズ」(部分)
文筆家 高野麻衣
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1998年の夏、はじめてこの作品の前に立った瞬間の感情を、いまもはっきりと覚えている。絵画は、音楽を奏でることができる。「歓喜の歌」とともに感じたその確信は、まるで人生の啓示だった。
グスタフ・クリムトの壁画作品である。第九交響曲にもとづいた三部構成。左に「幸福への憧れ」、中央に「敵対する勢力」、そして右には「歓喜の歌」。
ベートーヴェンをテーマにした第14回分離派展示会のために描かれたものだ。...