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岸政彦と柴崎友香が共著、それぞれの「大阪」描く

社会学者で作家の岸政彦(53)は大学進学時に大阪に来て、以来大阪に住み続ける。一方、芥川賞作家の柴崎友香(47)は大阪で生まれ育ち、30歳を過ぎてから東京に移り住んだ。そんな2人が大阪という街との関わりをつづった共著エッセー「大阪」(河出書房新社)が刊行された。岸の大学入学は1987年で、柴崎は当時中学生だった。2人のエッセーはバブル期とその後の長引く低成長で変わりゆく街の風景を描き出す。

「デフレを描いている点で共通する」と話す岸政彦=河出書房新社提供

「僕の大学時代はアルバイトのジャズミュージシャンとして週3回ぐらいお店でウッドベースを弾いたら十分な収入を得られた。そうしたお金が回り、豊かだった大阪は完全に過去のものとなった。柴崎さんも僕も大阪のデフレを描いている点では共通する」と岸は話す。柴崎も「バブル崩壊の直後はお金のせいで心が貧しくなった、などと言われたが、お金が回らなくなったことで失われたものも多い」と述べる。

「自分の実感を手がかりに街の姿を描いた」と話す柴崎友香=河出書房新社提供

子供のころ近くにあった商店街や居場所を感じた繁華街の「風景」などをつづった柴崎は「街の姿を描くには自分の実感を頼りにするしかなかった」と振り返る。一方の岸は「ど真ん中のことを書いた柴崎さんに対して、僕は飛び道具を使って勝負せざるを得なかった」といい、商店街が再開発を逃れる経緯をリポートしたり、散歩中の様子をライブ中継のようにつづったり、と工夫を凝らした。

「自分は大阪の人間だとは思うが、小学校時代を過ごしていないので大阪人ではない」と語る岸に対し「離れて暮らして15年にもなると、街の変化を体感できないところもある」と感じる柴崎。絶妙な距離感がこれまでにない「大阪本」を生んだ。

(中野稔)

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