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「鉄のまち」室蘭の人々の記憶 5年かけ壮大な映画に

映画「モルエラニの霧の中」の場面(C)室蘭映画製作応援団2020

北海道室蘭市は「鉄のまち」として知られる一方、豊かな自然環境に恵まれた港湾都市でもある。2011年に東京から室蘭に移り住んだ坪川拓史監督は、地元の人たちから聞いたエピソードをもとに連作形式の脚本を書き、映画「モルエラニの霧の中」を5年がかりで完成させた。「室蘭の人たちと話をすると決まって『何もない街』と返ってくるが、手つかずのすてきな場所がたくさんあり、小樽や函館に負けない魅力がある。ここに生きる人々とこの街を映画に残したいと思った」と語る。2月6日から東京・神保町の岩波ホールを皮切りに、全国順次公開する。

「モルエラニ」とはアイヌの人たちの言葉で「小さな下り坂」を意味し、室蘭の語源のひとつという。映画は「冬の章」から始まり次に訪れる「初冬の章」まで、美しい季節の移ろいとともに描いた。「水族館」「写真館」「港」「蒸気機関車」など地元を象徴するものをキーワードに、7つの物語を3時間超の壮大な映画に仕上げた。水族館職員と引っ越してきた母子との交流を描いた第1話は、転勤族も多いこの地の姿を映す。「室蘭は引っ越して風のようにまた引っ越していく『風の人』と定住者の『土の人』でできている街、といわれる。ここから去った『風の人』への思いを描いた」と監督。元樹木医を主人公にした第7話は、「キノコ博士」と呼ばれた地元男性を訪ねた際の男性と監督との会話をそのままセリフにしたという。

坪川拓史監督

坪川監督は1972年に室蘭で生まれ、長万部町で育った。90年に上京し、劇団研究生を経て映画監督やアコーディオン奏者として活動を始めた。長く住んだ東京の古い家屋が東日本大震災で損傷し「内風呂が露天風呂になった」という。これを機に室蘭の親戚の空き家に移り住んだ。久々の生まれ故郷は、人口が減り商店街の人影もまばらで「かつての記憶とは様変わりしていた」。そんな中でも、すてきな場所と面白いエピソードを持った多くの人たちに出会った。それらをもとに脚本を書き進め、有志が応援団を結成して資金集めをしてくれたという。

「あなたを想定して脚本を書きました」とファンレターのように手紙を送り、監督自ら俳優に出演依頼した。「面白いから会ってみよう」と意気に感じてくれた生前の大杉漣のほか、小松政夫、香川京子、大塚寧々らが快諾。エピソードを語ってくれた本人や演技経験がない地元の人たちも出演した。満開の桜を撮影する前日に強風で花が散り、翌年まで撮影を中断したことも。監督は室蘭について「蒸気機関車のように煙を吐き続け、日本を支えてきた鉄のまち」と改めて実感したという。

(関原のり子)

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