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「数と遊び戯れる」 独立研究者、森田真生が出した答え

「まだ意味のないものと遊び戯れるヒントが数学にはある」と語る 写真:新潮社

何のために数学を学ぶのか。独立研究者、森田真生の新著「計算する生命」(新潮社)には、その問いへの一つの答えが記されている。

「人はまだ意味のないものとして数と出合う。指を折り声を出して数えるという計算を重ねることで数の意味が少しずつ体に染み込んでいく。意味がないままに付き合う行為は子供の『遊び』の感覚に近い」。大人はイスを座るための道具だと知っている。でも子供は知らない。押したり倒したり、下に潜ったり。「座る」にとどまることなく、どんどん意味を拡張していく。「同じように計算は『まだ意味がない方』へと認識の可能性を広げてくれる」

例えば2-4=-2。小学生であれば答えられる引き算だ。しかし数が個数や面積などの「量」を表すという常識があった時代には負数は無意味だった。リンゴ2個から4個を取り除こうとすれば途中でなくなるだけ。「負のリンゴ」が2つ生じるとは考えない。でも数が「位置」を表すとみなしたらどうか。数直線上の2の目盛りから4つ後退したら0をまたぎ負数となることを素直に受け入れることができる。

ユークリッド、デカルト、リーマンらは、まだ意味のないものと向き合い、意味を拡張させ、適応させることで新しい世界にこぎ出した。本書では「計算の歴史は人間の認識が届く範囲を少しずつ拡大していった歴史でもある」ことが丁寧に語られる。

「新型コロナウイルスによるパンデミックなど私たちの目の前にはまだ意味のない世界が広がり、緊張の毎日を強いられている。このままではウイルスではなく精神の疲弊によって自壊しかねない。でも子供のように意味のないままに付き合い『遊び』の感覚を持つことができれば穏やかに暮らしていけるのではないか。危機だとおびえるのでも正しさにすがるのでもない、もう一つの可能性を示してくれたのが数学の歴史であり、数学を学ぶ意味はここにあると思う」

(近藤佳宜)

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