震災10年を絵画に 水戸芸術館「3.11とアーティスト」展

東日本大震災が起きた翌2012年に「3.11とアーティスト:進行形の記録」展を開いた水戸芸術館で「3.11とアーティスト:10年目の想像」展が開催中だ(5月9日まで)。前回は「支援を主眼においたプロジェクトや活動を時間軸で紹介した」(竹久侑学芸員)のに比べ、今回の会場で特に印象に残ったのが「絵画」作品の存在だ。
1982年生まれの加茂昂が描いたのは原発事故で帰還困難区域となった福島・双葉郡の風景だ。光に満たされたのどかな景色に引かれて近寄ると、画中に「この先 帰還困難区域 立ち入り禁止」の看板。草むらの一部などには異様なまでに絵の具が盛り上げられている。
震災後「絵など描いてる場合か」と自問した加茂は被災地にボランティアに入った。その後半年ほど福島県内で暮らし、「放射能のように目に見えないものとどう向き合うか」を考えつつ制作を開始。「福島の自然は美しい。でもきれいなだけではないことを常に意識している」と話す。
画面は無人。それだけに原発をつくった人間の存在が際立つ。盛り上がった絵の具は失われた10年の「時間の蓄積」だ。
「眠って堆積しているものの断片を思い返して掘り返す」。1991年生まれの佐竹真紀子は、木製パネルにアクリル絵の具を塗り重ね、彫刻刀で彫る自らの手法をこう表現する。被災地で江戸時代の絵図と出合い、「絵とは何かを記して残して、すごい時間を超えて残しうる」と感じたという。
「見えないもの、ここにないものを可視化し、想像力を喚起するアートは、緊急的、短期的というよりも中長期に求められる」と竹久学芸員。震災の経験を未来へつなぐ作品は今後もつくり続けられるだろう。ほかに小森はるか+瀬尾夏美、高嶺格、ニシコ、藤井光、Don't Follow the Windが出品。
(窪田直子)