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舞台と人生(5)俳優 小沢昭一

はかなきを愛し いくさを憎む  編集委員 内田洋一

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ラジオの長寿番組「小沢昭一の小沢昭一的こころ」で親しまれた話芸の達人は、俳句をよくした。俳号、変哲。著書「俳句で綴(つづ)る変哲半世紀」に「良寛さんとの縁」という随筆がある。心にとまる幕あい狂言のよう。

かすみたつ なかきはるひを

こともらと てまりつきつつ

この日くらしつ

そう書かれた歌の掛け軸を小沢さんは大切にしていた。良寛真筆ではないと鑑定済み。「偽物でもいい、これを書いた人も良寛を愛していたんだろう」と思えば、いとおしいから。

テレビの調査で母方の先祖に良寛さんとの縁があると知った変哲は、かの人の号が大愚ならせめて小愚に、と念じた。大愚良寛は浮世のしがらみを絶ち、童(わらべ)と手鞠(てまり)をついたとか。「年をとるにつれて良寛恋慕はつのりますなぁ」と記している。

□    □

亡くなる1年前、最後のインタビューをした。82歳の小愚変哲は持参したハーモニカをやおら吹き始めた。小学生のころから身についているから、話すよりこの方がいいと言って。

口から出るのは駄菓子屋通い、メンコ遊び、小鮒釣り、と蒲田で過ごした少年の日の思い出ばかり。昭和ヒトケタ生まれにとって、軍靴の響きに覆われる前の、花の東京はどれほど輝いていたのだろう。手鞠ならぬハーモニカは、黄金の日々の象徴なのだった。

うるわしき時を奪ったのは戦争だった。...

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