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ドイツの壊滅的な洪水、忍び寄る気候変動の影響

ナショナル ジオグラフィック

ドイツ西部を覆った動きの遅い低気圧による豪雨は、壊滅的な被害をもたらし、多くの命を奪った。地域全体で泥流が家屋を押しつぶし、下水管がむき出しになった。(Photograph by David Young, picture alliance/Getty Images)

 ドイツをはじめ、ベルギーやオランダ、ルクセンブルクの一部で、数日にわたる豪雨が発生し、壊滅的な洪水をもたらした。死者は180人に上っている。

今回の豪雨と気候変動との関係について、科学者らはまだ明らかでないとしているが、気候変動がどんな暴風雨をもたらすかはわかったと言う。すなわち、より多くの雨が、より長く降り続くということだ。

洪水の大半が発生したドイツのライン川流域では、降雨量が記録を更新した。家屋は浸水し、ボートで道を渡らなければならなくなったほか、流域に建つ城の一部が流された。

「異常気象が増えることは気候モデルから予測されており、さほど驚くことではありません」と、ドイツのポツダム気候影響研究所の気候学者、ディーター・ゲルテン氏は述べている。それでも、今回の洪水の規模と激しさにはショックを受けたと言う。ゲルテン氏の生まれ故郷であるドイツ、オーバーカイルでも洪水があった。

「今回の出来事は、ドイツのような裕福な国であっても、厳しい気候の影響からは逃れられないことを示しています」と、米コロンビア大学の気候物理学者、カイ・コーンフーバー氏も言う。

気候変動で雨はどう変化するか

世界中の天気予報を提供するAccuWeatherによると、西ヨーロッパでは7月中旬から、動きの遅い低気圧のために激しい雨が降り続いていた。ドイツの一部では、1日の降水量が例年の1カ月分を超えた。この低気圧は、7月12日にロンドン各地で洪水を引き起こした後、南ヨーロッパに向かって移動していた。

気候変動は、今回の洪水に二つの点で影響を与えたと、科学者らは考えている。降雨量の増加と、暴風雨の動きの遅さだ。

「21世紀の気候のせいで、今回のような強い雨が起きる可能性が高まっているのか」との問いに、ゲルテン氏はそれはあり得ると答えている。

気温が上昇すると、空気中に蓄えられる水蒸気の量が増える。科学者らの見積もりによると、気温が1℃上昇するごとに、大気中に蓄えられる水分量は約7%増加する。大気中の水分量が増えれば、ヨーロッパを覆う低気圧や大西洋のハリケーンなどによる降雨量も増える。

洪水が発生するかどうかは、降雨量や都市開発の状況、地形(盆地か否か)などさまざまな要因に左右される。だが、今回の洪水がこれほど大規模になったのは、降雨量の多さが原因ではないかとゲルテン氏は言う。

 6月30日付けで学術誌「Geophysical Research Letters」に発表された論文によると、大量の雨を降らせる雨雲がよりゆっくり動くことで、ヨーロッパでは今後、今回のような豪雨の頻度が高まるという。

「北極での温暖化増幅により、一般にこのような嵐の移動は、夏や秋にはさらに遅くなっていくと思われます」と、論文の著者の一人である英ニューカッスル大学の水文気候学者、ヘイラー・ファウラー氏は述べている。

北極や南極では、世界の他の地域に比べて2〜3倍のスピードで温暖化が進んでいる。その結果、北半球ではジェット気流が不安定になっていると、科学者らは考える。

両極地方と赤道地方の温度差が大きいときには、強く一定のジェット気流が吹くが、両極地方の温暖化が進むと温度差が縮まり、ジェット気流の速度が低下する。結果、低気圧や高気圧が停滞する期間が長くなるのだとゲルテン氏は説明する。

「気象は3日から7日ごとに変化するものですが、現在では数週間も同じ気象パターンが続くようになっています」

ドイツのコーデルでは、洪水のため村全体が冠水した。(Photograph by Sebastian Schmitt, picture alliance/Getty Images)

今後も起こるのか?

科学者らは現在、今回の大災害に気候変動がどれほど影響しているかを調べている。

極端な気象と気候変動との関係を研究している「ワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)」イニシアチブは、人間の影響によって洪水がどれほど強度を増すかを調査する予定だ。同イニシアチブの科学者からなる国際的なチームは7月上旬、米国太平洋岸北西部の猛暑は、気候変動がなければ「まずあり得なかった」だろうと判断している。

ファウラー氏らは、産業革命前の気象条件を使って低気圧のシミュレーションを実施する予定だという。あわせて温室効果ガスの影響を織り込んだシミュレーションを実施することで、気候変動の有無によって影響がどう変わるかを比較する。

「気候変動が今回の洪水の規模を拡大させた可能性があります。激しさが増す要因になったことはまず間違いありません」とファウラーは言う。

コーンフーバー氏は、気候変動がドイツの洪水に具体的にどのような役割を果たしたか推測することは躊躇しながらも、「これがただの偶然だとしたら、大変な驚きでしょう」と述べている。

「気象は変化しています」と氏は言う。「温暖化が1℃進むごとに、豪雨はますます激しさを増すことがわかっています。今後はこのような事象がさらに増えることが予想されます」

文=Sarah Gibbens/訳=山内百合子 (ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2021年7月21日公開)

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