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ベゾス氏が宇宙旅行へ なぜ大富豪は宇宙目指す?

ナショナル ジオグラフィック

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アマゾンと宇宙企業ブルーオリジンの創業者ジェフ・ベゾス氏。2017年に米国コロラド州で開催されたブルーオリジンのイベントで撮影。(PHOTOGRAPH BY NICK COTE, THE NEW YORK TIMES/REDUX)

筆者(ナショナル ジオグラフィックの科学編集者Victoria Jaggard)は「宇宙に行きたくないタイプの宇宙オタク」だ。高所恐怖症なうえに閉所恐怖症でもあるため、宇宙を訪れるために必要なことを知れば知るほど、魅力を感じなくなっている。

しかし、成層圏の外にぜひ出てみたいという冒険好きがいるのもわかる。その特権を手に入れるためであれば喜んで大金を出す億万長者までいるほどだ。

アマゾンと米国の宇宙企業ブルーオリジンの創業者であるジェフ・ベゾス氏は2021年6月7日、7月後半に予定されているブルーオリジンのロケット、ニューシェパード初の有人飛行に自ら参加し、宇宙を目指すことを発表した。ニューシェパードの発射システムは弾道飛行で、高度100キロの「カーマンライン」(宇宙空間との境界とされる基準の一つ)のすぐ上までクルーカプセルを運ぶ。

カーマンラインは宇宙の始まりを意味する仮想の線だ。カプセルがパラシュートで地球に帰還するまでの数分間、参加者は無重力状態を体験することになる。すべてが計画通りに進めば、ブルーオリジンは一生に一度のスリルを味わえる「宇宙旅行」を多くの人に提供したいと考えている。

宇宙旅行の料金は明らかにされていないが、ベゾス氏は7月のテスト飛行の1座席をオークションにかけた。

宇宙旅行は決して新しい概念ではなく、過去には国際宇宙ステーション(ISS)まで行った人もいる。初めて自費で宇宙旅行をしたのは投資管理業界の大物デニス・チトー氏で、2000万ドル(約22億円)を支払い、宇宙飛行士2人とロシアの宇宙船ソユーズに搭乗した。

当時、スリルのためだけに民間人を地球周回軌道へ送り込むことは、「道楽であり、大富豪にしかできないぜいたく」という批判を呼んだ。しかし、ソユーズの座席代を支払う人が誰であろうと、1960年代から有人宇宙飛行に貢献し続けるソユーズの運用コストを補う助けになっていることもまた事実だ。

米国のスペースシャトル計画が2011年に終了すると、宇宙飛行士をISSに運ぶ手段はソユーズだけになり、お金があっても宇宙を訪れるチャンスは枯渇した。だからこそ、商業宇宙飛行は変革をもたらす可能性がある。

スペースXのファルコン9ロケットとドラゴン宇宙船がISSに宇宙飛行士を運ぶようになったことで、料金を支払えば座ることのできる座席が再び生まれ、早ければ2022年にも、民間人がISSを目指す可能性が出てきた。同時に、ブルーオリジンと弾道飛行のライバルであるヴァージン・ギャラクティックもようやく、それぞれの宇宙船で人々を空に送り出す準備ができたようだ。

宇宙旅行に批判的な人は、法外なコストと環境への影響を指摘する。ブルーオリジンはそうした批判をかわすため、科学ペイロード(搭載機器)の運搬を開始しており、NASAや研究機関の利益になっている(例えば、3Dプリンターが無重力環境で動作するかを確認できる)。

ブルーオリジンのニューシェパードは再利用可能なため、安全性が実証され、定期的な飛行が実現すれば、理論的にはコストを下げることができる。

ところで、筆者が個人的に驚いているのは、プロの宇宙飛行士でも大富豪でもない人々が実際どれくらい宇宙に行きたがっているかだ。

2018年にピュー・リサーチ・センターが実施した調査では、娯楽としての宇宙飛行に無関心なのは私だけではないようだ。実に米国の成人の最大58%が宇宙旅行に興味がないと回答している。クリスティン・ベッドナーズ氏の記事にあるように、これらの人々が「挙げている懸念事項は高額な費用、健康上の不安、飛行時に経験するであろう恐怖」などだ。

それでも、宇宙旅行の先駆者であるチトー氏の心からの叫びを紹介したいと思う。宇宙に行きたい気持ちが少しでもあれば、背中を押してくれるかもしれない。

「私の夢は死ぬまでに宇宙に行くことでした」。チトー氏は2011年、「Space.com」にこう語っている。「私が得たものは、私の人生は完成したという感覚です。これからの人生は、すべておまけのようなものです」

ブルーオリジンのクルーカプセルの座席を試す人々。2017年にコロラド州で開催されたイベントにて。(PHOTOGRAPH BY MATTHEW STAVER, BLOOMBERG/GETTY IMAGES)

文=VICTORIA JAGGARD/訳=米井香織 (ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2021年6月12日公開)

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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