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私のすべて、次世代へパス 68歳・ジーコ氏のサッカー魂

人生100年の羅針盤

鹿島アントラーズ・テクニカルディレクター。1953年ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。サッカーの王様ペレの後継者と目された名選手。1981年フラメンゴでクラブ世界一に輝き、ワールドカップ(W杯)にも3度出場。1998年W杯ではブラジル代表のザガロ監督を補佐し準優勝、2002年から2006年まで日本代表監督も務めた。2016年日本サッカー殿堂入り(三浦秀行撮影)

30年前、茨城の片田舎で生まれた鹿島アントラーズは今やJリーグ屈指の強豪に育った。1991年に来日、前身の住友金属時代から選手、指導者としてその発展に寄与したジーコさんは68歳の今も、強化を担うテクニカルディレクターとして第一線に立つ。

鹿島の「歴史」、若手に伝承

――「人生100年時代」という言い方で、働ける間は働こうという機運が広がっています。年齢と仕事の関係をどう思いますか。

「職種によると思います。例えば今、私が監督をやろうとしても膝の古傷のせいで難しい。ほぼすべてのメニューを実際に体を動かしながら選手と一緒に取り組むのが私のやり方なので」

「でも、試合を観察して事の良しあしを見極め、スタッフに助言する今の仕事には何の支障もありません。今でこそアントラーズは一つのブランドとして存在するかもしれませんが、ここに至る道のりにはいろいろなことがありました。若い選手に、そういう歴史をしっかり伝えることもできます」

「昔は存在しなかった仕事も今はある。実は私もユーチューブ上で活動をしていて、いろいろな人をインタビューしています。これが楽しい。自然にモチベーションが上がる活動であれば、そこに年齢という制約はなくなるように思います」

――そうはいっても「疲れたなあ」と感じることはないですか。

「膝の痛みはありますが、ウオーキングやジム通いは欠かしません。食事と睡眠をしっかりとることも。動ける体にしておけば、必然的に元気に仕事に取り組めますし、新型コロナウイルスの予防、感染の被害を最小限に食い止める意味でも運動は大切だと思います。それと、やはりサッカーですね。愛するサッカーについて議論したり雑談したりすることは私にとって一番のエネルギーの源です」

負ける怖さから、勝つ意欲を失うことなかれ

――大事にしている信条は何ですか。

「フラメンゴにいた10代のときからずっと『負ける怖さから、勝つ意欲を失うことなかれ』と言い聞かせ、実践してプロの世界を生き抜いてきました。選手として初の海外挑戦となったイタリアでは『記憶と忍耐』の重要性を学びました。学習したからといって、すぐに成果に変換できるわけじゃない。学びを成功体験に変えて美しい記憶にするには、忍耐なくして不可能だということを」

鹿島で現役選手だった1993年、ハットトリックを達成しガッツポーズを決めたジーコさん(共同)

――長年ジーコさんの活動を見てきて、ミッション(使命)のようなものを感じます。

「私は、人間は生まれた時から、それぞれその人に課されたミッションがどんな形であれ、多かれ少なかれ、あると思っています。自分が学んできたものを伝えることも、その一つだと。人間、亡くなるときがくると神様が連れにくるわけですが、そうなる前に私が学んだ知識や経験を残すことはできる。それを次の世代が生かしてくれたら、サッカー界、ひいては世の中を発展させることにつながるのではないでしょうか」

「献身・誠実・尊重」のジーコ・スピリット、日本中に種まき 


今年創立30周年を迎えた鹿島のファン、サポーターから「神様」とたたえられるジーコさん。相馬直樹現監督をはじめ、小笠原満男氏、中田浩二氏ら教えを受けた選手たちは今クラブのスタッフとなり、「献身」「誠実」「尊重」に集約されるジーコ・スピリットを伝える側に回っている。
 〝布教〟の成果は他のクラブにも及ぶ。現在Jリーグで無敵の川崎にしても、関塚隆元監督や鬼木達現監督はジーコさんの薫陶を受けた鹿島OB。「日本に長くいられたのは私がこの国の文化と深く結びつけられたから」と感謝するジーコさんは、まいた種があちこちで実を結ぶことを「間接的にでも日本サッカー全体の発展に貢献できた」と喜ぶ。(編集委員 武智幸徳)

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