トヨタ労組、賃上げ要求「20年で最高水準」 ベアに言及
トヨタ自動車労働組合は31日、2023年春季労使交渉の執行部要求案を決めた。職種や階級ごとに賃上げの要求額を示し、例えば、総合職にあたる「事技職、主任職」は標準的な考課で月5860円と前年実績に960円を上乗せして求める。要求額は「この20年で最も高い水準」(光田聡志書記長)とした。物価高に対応し、賃金を一律で引き上げるベースアップ(ベア)を要求することを3年ぶりに明らかにした。

要求内容は2月8日に正式決定し、会社側が回答するとみられる3月中旬に向けて交渉する。
15種類の職種・階級それぞれで賃上げ要求額を組合員に示した。トヨタ労組は22年春に組合員の平均を示して賃上げを要求する方式をやめており、23年も踏襲する。賃上げ額はベア分や定期昇給に当たる部分を含む。1人当たりの賃上げ原資の要求額を過去20年で最高水準にするという。ベアの水準は明らかにしていない。
職種・階級ごとの賃上げ要求額は、「事技職、主任職」の下位にあたる「指導職」は9370円、「担当事技職」は7870円とし、20〜30代の若手従業員が多い階級により手厚い賃上げを求める。

若手への手厚い配分について「賃金の絶対水準が低い若手は物価上昇の影響を受けやすいほか、採用競争力の観点でも(賃金の)底上げが必要」(光田氏)と説明した。初任給にあたる企業内最低賃金についても初めて引き上げを求める。
年間一時金は基準内賃金の6.7カ月分を要求し、前年の要求を0.2カ月分下回る。資材高騰などでトヨタが23年3月期の連結業績を減益見通しとしていることを踏まえた。半導体不足などによりトヨタは同期の世界生産台数の計画を当初の970万台から920万台に引き下げている。トヨタ労組が13年連続となる満額回答を得られるかどうかは不透明だ。
賃上げは賃金水準を一律に引き上げるベースアップと、勤続年数が上がるごとに増える定期昇給からなる。2014年春季労使交渉(春闘)から政府が産業界に対し賃上げを求める「官製春闘」が始まった。産業界では正社員間でも賃金要求に差をつける「脱一律」の動きが広がる。年功序列モデルが崩れ、生産性向上のために成果や役割に応じて賃金に差をつける流れが強まり、一律での賃上げ要求の意義は薄れている。
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