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トヨタ、米リフトの事業買収 自動運転で巻き返し狙う

トヨタ自動車が自動運転やライドシェアなど次世代サービスにつながる技術開発を急ぐ。27日、ライドシェアを手掛ける米リフトの自動運転部門を買収すると発表した。自動運転技術は米グーグル系や米ゼネラル・モーターズ(GM)などが先行し、技術や人材、データの囲い込みが激しい。ソフトウエア人材の採用拡大に加え、事業買収を通じ、競合との開発競争で巻き返す狙いだ。

子会社のウーブン・プラネットHDを通じて事業買収する(ジェームス・カフナーCEO)

子会社でソフトウエア開発などを手掛けるウーブン・プラネット・ホールディングス(HD、東京・中央)がリフトの自動運転部門「レベル5」を買収する。今夏にも買収を完了する予定で、買収金額は約5億5000万ドル(約590億円)。約2億ドルを先行して支払い、残りの3億5000万ドルを5年間で支払う。

リフトは2012年に設立。米国やカナダを中心にライドシェアサービスのアプリを提供し、19年3月に米ナスダックに上場した。米カリフォルニア州の公道での自動運転試験データ(期間は19年12月~20年11月)の走行距離の企業順位は7位で、独ダイムラー(8位)やトヨタ(18位)などの自動車大手を上回る。

トヨタがリフトの事業買収を決めたのは、自動運転技術の開発スタッフを迅速に確保するためだ。トヨタ幹部はリフトについて「(次世代移動サービスの)MaaS向け自動運転の開発で先行しており、人材の質も高い」とみる。買収でリフトの米国と英国の開発拠点や約300人の人員を引き継ぎ、自動運転関連の開発人員は世界で約1200人体制となる。

トヨタは次世代技術を担う人材の確保に危機感を持つ。22年春の新卒技術職の採用で人工知能(AI)やクラウドなどのソフトウエア人材の比率を前年比で倍増させる方針だ。人材確保により自動運転技術の開発を早め、安全性の向上や商用化に道筋をつけたい考え。

自動運転技術の質向上には欠かせない、走行データなども提携で入手する。トヨタは今回、リフトとシステムと車両データの活用でも合意した。リフトが蓄積したデータを得て開発の精度を高める。配車やライドシェアのアプリ利用者の需要データも、効率的な事業運営に重要になる。

自動運転は特にトラック輸送や乗り合いバスといった商用車領域で導入すれば物流・運輸会社の収益向上につながるため、世界で開発競争が激化している。走行距離やレベルで先行するのが、GM子会社のGMクルーズや米アルファベット傘下のウェイモで、2社のカリフォルニア州の公道走行試験距離の実績はリフトの約20倍だ。

自動車各社はこれらの事業者との陣営作りを通じて、技術や実績データの囲い込みを急いでいる。GMクルーズにはホンダも出資して共同開発を進めているほか、ウェイモは日産自動車や仏ルノーと無人運転サービスで提携する。

トヨタも19年に米ライドシェア大手のウーバーテクノロジーズの自動運転部門、20年には中国の小馬智行(ポニー・エーアイ)、21年にはウーブン・プラネットHDを通じて米ニューロに出資するなど中堅自動運転スタートアップとの協業を複数進めている。

ただ、これらの企業には他社も出資しており、人材活用やデータ取得などの協業範囲は限られる。トヨタはリフトの事業買収を含む提携で協業の深度を深めたい考えだ。

自動運転技術の実用化ではトヨタは他社の先行を許している。ホンダは3月にシステムに運転を任せる「レベル3」相当の高級セダン「レジェンド」を発売した。一方でトヨタは運転手の監視下で手放し運転ができるレベル2相当の自動運転システム搭載車を4月に一部車種で投入し始めた段階だ。

商用車でもウェイモが既に米アリゾナ州で無人車両による配車サービスを始めている。トヨタは特定条件での完全自動運転が可能なレベル4相当の自動運転車「イーパレット」を東京五輪の選手村での送迎向けに実用化する予定だが、敷地内の走行にとどまる見込み。

「コンピューター上のシミュレーションによる車両走行テストも活発なため、リアルの走行実績だけで技術力を比較するのは難しい」との指摘があるものの、実用時期では差がついているのが現状だ。

ウーブン・プラネットHDのジェームス・カフナー最高経営責任者(CEO)はリフトの事業買収によって「よりスピード感のある事業を進めることができるようになる」とコメントした。今後は自社開発に加え、協業先との関係構築や開発を円滑に進められるかが競争を勝ち抜くカギを握ることになる。

(福本裕貴)

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