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地元神社の盛り上げ、シニアが力添え さい銭箱も自作

かつて多くの住民が集まり、活気ある祭りが催された地域の神社。昔ながらの近所付き合いが薄れ、すっかり静かになった境内を盛り上げようと、シニア世代がさまざまな取り組みを進めている。

黒龍神社の盛り上げに携わる地元の人たち(名古屋市西区)

賽銭(さいせん)箱、おみくじ掛け、線香立て――。「黒龍神社」(名古屋市西区)の境内に手作りした品がいくつも並ぶ。とりわけ参拝客の目を引くのが、社殿に鎮座する木彫りの「龍神像」だ。とぐろを巻いた龍の全長は約10メートル。神社の世話人を務める小田良巳さん(76)が6年かけて独学で彫り上げた力作だ。

この神社はもともと、60メートルほど離れた庄内川沿いにあり、数十年前は祭りに多くの住民が参加し、盛り上がっていた。常駐の宮司はおらず、小田さんは亡くなった祖母から世話人を引き継いだが、近年は草木が伸びてうっそうとし、訪れる人も少なくなっていた。

2019年9月、堤防のかさ上げ工事に伴って今の場所に「遷座」した。これをきっかけに住民が集まる場所にしようと、小田さんは知り合いに声をかけ、新たに世話人として神社に携わってもらった。鉄鋼関係の仕事をしていた富井幸三さん(71)は、溶接の経験を生かして丈夫な鍵付きの賽銭箱などを手掛けた。百貨店嘱託社員の河村誠さん(63)は「幼い頃は祖母に連れられてお参りをしていた。神社を盛り上げる手伝いをしたかった」と世話人に加わった理由を語る。

社務所を活用した書画教室も2度開き、10人ほどが参加したが、新型コロナウイルスの影響で現在は休止中。ただ、以前と比べ、お参りや散歩で神社に立ち寄る親子連れやウオーキングのグループの姿が目立つようになった。小田さんは「仲間と一緒に神社を盛り上げ、再び地域の人がつながる空間にしたい」と話す。新しい年を控え、今は手彫りの「開運守り」作りに力を入れているという。

小田良巳さんは独学で龍の像を作った(名古屋市西区の黒龍神社)

高知県四万十町で米店を営む大川内憲作さん(64)は4年前、得意な木工を生かして自作の賽銭箱を地元の「白河神社」に奉納した。もともとあった賽銭箱が古くなり、年配の親しい住民から頼まれたのがきっかけだった。

50歳を過ぎてから趣味の木工に打ち込んだ大川内さん。高知市の有名な木工家を訪ねて技法を参考にし、研究と試行錯誤を続け、およそ半年をかけて完成にこぎつけた。くぎを使わなくても頑丈になる伝統的な組み方を用いた。

大川内さんは「ものづくりの創意工夫は楽しく、ワクワクする。自分が作った物が地元の神社のためになってよかった」と語る。すっかり古くなった拝殿を修繕するには資金が足りないが、ケヤキの立派な賽銭箱ができたことで神社関係者は喜んだ。

その後、大川内さんは氏子の総代となった。周囲の地域は住民の高齢化で伝統の例祭が催せなくなっているが、白河神社は50~60代が中心となり、今も続いている。

このように、特技を生かして地元の神社の盛り上げを図るシニア世代は各地におり、中には100個以上の賽銭箱を多くの神社に贈った人もいる。

皇学館大の板井正斉教授(宗教社会学)の調査によると、全国の神社のうち、半径500メートル内の住民が25人に満たない神社は12・9%と推定される。運営を担う氏子総代や世話人のなり手不足といった課題に加え、資金難に直面する地方の小さな神社は多い。

板井教授は「神社や寺が存続していくためには、地域にとってどんな役割を果たすかを見直す必要がある」と指摘。「お参り、お祭りだけの場所ではなく、高齢者が日中に集まったり、子どもたちと一緒に過ごしたりする場所として存在感を示す余地はある」と話す。シニアの力添えをきっかけに、寂しい境内に新たなにぎわいが生まれるかもしれない。

(茂木祐輔)

初詣の感染対策にもシニアのアイデア


新型コロナウイルスの感染が収まらない中で迎える年末年始。地方の神社も初詣の参拝客に向けた感染対策を進めている。ここでもシニア世代のアイデアが生かされた例がある。
「尾張多賀神社」(愛知県常滑市)は不特定多数が触るひしゃくの代わりに、自動水栓を取り入れた。発案したのは元市職員で2017年から氏子総代を務める岩田久喜さん(64)。氏子総代でもある地元の工務店を頼り、手をかざすだけで水が出る仕組みにした。例年の正月は5万人ほどが参拝する。政府は初詣の日時の分散を呼びかけており、尾張多賀神社は人の密集を避けるため、参拝順路をあらかじめ決める予定だ。

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