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強制不妊、進まぬ救済 支給認定の女性「勇気持って」

旧優生保護法下で不妊手術を強制された人に対する国の救済が進んでいない。周囲の偏見への不安があり、一時金の支給申請に踏み切る被害者が少ないからだ。救済法施行から4月で2年を迎える。支給が認められた女性は「悔しいが、恥ずかしいことではない。勇気を出して申請する人が増えてほしい」と語る。

2020年10月、国が名古屋市の女性(71)に対し、被害者救済法に基づく一時金320万円の支給を認めた。女性は先天性の聴覚障害があり、25歳のときに同じく聴覚障害のある夫(74)と結婚。その2カ月後、母親から「生まれてくる子どもの耳が聞こえなかったら、どう育てるのか」と強く迫られ、不妊手術を受けた。

子どもを育てたい気持ちは強かったが、当時は逆らえなかった。夫に申し訳ないと思い、離婚を申し出たこともあった。子どもの話題を「封印」したまま、50年近く連れ添ってきたという。

女性は国家賠償訴訟の報道で一時金の創設を知り、20年2月に申請。「私の人生は元には戻らない。320万円だって少ない。でも、私たちの経験を知り、申請する人が増えてくれれば」。女性が記者会見を開いて語った背景には、救済を申し立てる人の少なさがある。

旧優生保護法(1948~96年)を巡っては、19年4月に被害者救済法が議員立法で施行され、国が一律320万円を支給する制度ができた。厚生労働省によると、知的障害や遺伝性疾患などを理由に不妊手術を受けた人は全国で約2万5千人いたとされる。ただ、一時金を申請したのは20年12月末時点で1018人、認定を受けたのは833人にとどまる。

愛知県聴覚障害者協会の中嶋宇月理事長は「周囲から『お金目当てだ』と非難されるのが怖くて、申請をためらう相談者が多い」と指摘する。

申請手続きを支援している愛知県の高森裕司弁護士は「多くの被害者がいるはずなのに救済が進まないのは、まだ社会的な差別が残っているからだ。他人に知られる心配もないし、手術を証明する資料がしっかりと残っていなくても認められる可能性がある。まずは相談してほしい」と呼びかけている。

(林咲希)

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