「営業意味ない」 愛知・岐阜、時短強化で嘆く飲食店
いつまで耐えればいいのか――。政府の緊急事態宣言が追加発令された愛知、岐阜の両県は飲食店への営業時間短縮要請を強める。新型コロナウイルスの感染拡大で夜の繁華街は閑散としたまま。追い詰められた店主は焦りを募らせ、「営業する意味がない」と休業に踏み切る動きもある。

「店を開けても、あまり客は来ない」。名古屋駅周辺の「やきとり 龍星」店長、牛田昌芳さんは、県の時短要請が午後8時までに前倒しされる18日からの休業を決めた。年末ごろから出張客らが急減し、最近の売上高はコロナ前の半分以下に。従業員9人の人件費や光熱費が負担となっていた。
鶏肉の仕入れ量を減らすなどして経費を抑えてきたが、限界はある。予定通り2月7日に時短要請が緩和されない場合は、さらに休業を続けることも考えるという。「医療現場を中心に皆が大変な状況。仕方ないとは思うが、いつまで続くのか」とこぼす。
愛知県は2020年12月18日、酒類を提供する飲食店への時短要請を県全域に広げた。緊急事態宣言の再発令に伴い、1月18日から時短要請を強化する。閉店時間は午後9時から午後8時に早め、酒類の提供は午後7時まで。対象は全ての飲食店に広げる。
応じた店への協力金は現在の1日4万円から6万円に増えるものの、飲食店経営者の不満は大きい。名古屋・栄で居酒屋を営む男性店主(69)は「せっかく来てくれるお客さんをすぐに追い出さないといけない」とぼやく。開店は午後5時半で、客が増え始めるのは午後7時ごろ。今は宅配サービスによる弁当の売り上げが暮らしの支えで、「客と接するのが楽しくて店を続けてきたが、当分は弁当の店としてやっていくしかない」とあきらめ顔だった。
愛知県は宣言解除に向け、県内の新規感染者が1日260人、入院患者500人(いずれも過去7日間の平均)を下回るなどの目安を示した。名古屋市中区のすし店経営者(61)は「本当に感染が収まるのか。どうせまた延長だ」と嘆く。「人が密集するところは居酒屋以外にもあるはず。そろそろ違う対策も強化してほしい」と訴えた。
岐阜県でも16日から午後8時までの時短要請が全ての飲食店に広がり、協力金が1日4万円から6万円に引き上がる。岐阜市内で居酒屋を経営する男性(41)は「今の売り上げを超える額。正直助かる」と歓迎する一方、「最近はお年寄りだけではなく、若者の姿もなくなった。このまま街から人が離れていくのかな」と寂しげだった。
仕事終わりに飲みに出る人はさらに減りそうだ。名古屋市千種区に住む男性会社員(37)は毎日午後8時ごろまでに仕事が終わり、定食屋に寄った後でサウナへ行き、施設内でビールを飲むのがやすらぎの時間だった。「1人で静かに過ごすので感染リスクは低かったはず。しばらくは自宅でコンビニ飯になりそう」と苦笑する。
建設会社に勤める同市天白区在住の男性(49)は感染拡大を受け、同僚とのオンラインでの飲み会を増やした。年末に初めて参加したが「無愛想な若手も画面越しでは結構しゃべる」と好感触だ。家族へ感染させないよう、当分は居酒屋に行かないつもりだ。
(植田寛之、宮田圭)