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独りぼっちの新入社員 相談相手なく、迫る不安な2年目

点描・中部シゴトの影

長い在宅での研修、オンラインの新人教育――。2020年春の新入社員たちは異例の1年を過ごした。悩みを打ち明ける先輩や同期がおらず、孤立する新人も目立つ。「社会人になった実感が持てない」。不安を抱えたまま、2年目を迎える。

先輩との気軽な雑談を求める新入社員は多い

「来月から新人を教えられるだろうか」。愛知県内の自動車部品メーカーに入社した女性(23)は不安を口にする。営業現場の仕事が本格化したのは冬。例年の新人よりも3カ月ほど遅かった。

先輩の多くは在宅勤務を続けている。分からない点は電話やチャット機能で質問するよう指示されたが、「どんな聞き方をすればいいのか」と遠慮してしまう。担当の取引先との商談もオンラインで、対面での打ち合わせは一度も経験がない。現場までの移動がなく効率的と思うが、信頼関係を築けた手応えは薄い。

新型コロナウイルスの感染拡大で大学の卒業式は中止に。入社式もオンラインで、4月から約2カ月は会社から送られた資料を黙々と読み込むだけだった。外出自粛で学生時代の友人とも会えず、愚痴を言える時間もなかった。「ずっと家。社会人になった感じがしなかった」

コロナ下で社内の人付き合いも難しかった。名古屋市内の企業に勤める男性(24)の場合、入社後2カ月間はビジネスマナーなどの動画を見る研修が続いた。同期の8割はいまだに顔も分からない。先輩とゆっくり話す機会がなく、悩みを相談する人は見つかっていない。

先輩は全員マスク姿で、顔と名前を一致させるのも苦労したという。「今日は4回もあいさつされたぞ」。そんな嫌みを言われた日もある。

就職情報サービスのマイナビ(東京)が20年に入社した人に「会社や上司、先輩にやってもらいたいこと」を尋ねたところ、「話しかけてもらえる、雑談してくれる」との回答が63%でトップだった。「職場内訓練(OJT)」(45%)、「自分の業務にアドバイスやコメントが来る」(39%)と続いた。

「会社で何年くらい働くか」との質問では、「3年以内」が28%を占めた。19年と比べ6ポイント増え、「定年まで働き続ける」(18%)を上回った。

「今夏までに会社を辞める」。昨春に名古屋市のソフトウエア会社に入った男性(23)は早くも転職活動中だ。感染が再拡大した冬は週の半分ほどが在宅勤務で、自身のキャリアについて考える時間が増えた。業績を落とす会社が多いなか、「会社が定年まで存続する保証はない。もっと専門性を磨ける会社に移りたい」と考えている。

新人を育てる先輩たちも試行錯誤が続いた。愛知県内のメーカーの男性(31)は同じ部署の新人について「1人でぼんやりしていることが多く、あまりなじめていない」と心配する。

当たり前だった新人との酒席はほぼ無くなった。できる限り話しかけるようにしているが、仕事以外の話題が見つからない。「あまり話したことがない先輩に悩みは打ち明けられないよね。どうしたものか」

「新型コロナの影響で新入社員が孤立しやすく、会社に所属しているという意識が生まれにくくなっている」。同志社大の松山一紀教授(組織行動論)はこう分析し、離職を防ぐには年の近い先輩と話す場を設け、会社でのキャリアを意識させる必要があると指摘する。

常見陽平・千葉商科大准教授(労働社会学)は「新人教育に悩んでおり、昨年の入社式を中止またはオンライン形式にした会社は、改めて対面での式を実施して社会人になった実感を持たせることを検討してみては」と話した。

(植田寛之)

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