トヨタ、初の手放し運転車 レクサスとミライで
トヨタ自動車は8日、自動運転で「レベル2」相当のシステムを搭載した高級ブランド・レクサスのセダン「LS」と水素を燃料とする燃料電池自動車(FCV)「ミライ」を発売すると発表した。ハンドル操作やスピード調整を支援して「ハンズフリー」の運転が可能で、市販車への搭載はトヨタでは初となる。トヨタは自動運転で安全や快適な乗り心地を追求し、消費者にアピールしていく。

世界では特定条件下での完全自動運転が可能になるレベル4以降の開発競争も激しくなっており、独アウディや米アルファベット傘下の自動運転開発会社ウェイモが先行する。米ゼネラル・モーターズ(GM)傘下のクルーズも、21年内にもホンダとレベル4に相当する無人ライドシェアサービスの実証実験に取り組む予定だ。
新型の高度運転支援システム「アドバンスドドライブ」を搭載した車種の販売を始める。LSは4月8日、ミライは同月12日に発売する。車体価格はLSで税込み1632万~1794万円、ミライは同845万~860万円を予定する。システムを搭載していない場合とくらべて約50万円高くなる。
アドバンスドドライブでは、高速道路や自動車専用道路での車線の維持や車線変更、追い越しをシステムが判断して自動運転する。自動運転レベルは5段階に分かれており、今回のシステムはレベル2の「運転支援」に相当する。ドライバーが常に運転・システムを監視しなければならず、事故が起こった場合は運転手の責任となる。
新システムではセンサーを通じて得た周辺や運転手の状況を人工知能(AI)が判断して危険を予測し、安全にシステム操作ができるよう支援する。大型車の追い越しでは車間距離を多く取るなど、ドライバーの不安を抑えるような運転も可能にした。8日、オンラインで記者会見した前田昌彦最高技術責任者(CTO)は「実際に運転手がどう感じるかを議論して開発してきた」と述べた。
購入後もインターネット経由で自動車のソフトウエアを更新する「オーバー・ジ・エア(OTA)」の技術も採用した。自動運転に必要な制御や地図情報のソフトウエアを更新することで、最新の運転支援技術を提供する。車外の画像データも記録して運転状況を分析することで、自動運転技術の向上につなげる。

トヨタは2月に自動運転技術スタートアップの米オーロラ・イノベーションと提携を発表したほか、中国のスタートアップにも出資するなど関連企業との提携を積極的に進めている。レベル4相当の自動運転車「イーパレット」も東京五輪の選手村の送迎向けに実用化する計画だ。
ただ市販車ではホンダ・レジェンドのレベル3相当にはまだ及ばない。トヨタは「レベル競争よりもどうすれば安心して任せられるかが大事だ」(前田CTO)とし、「チームメイト」と呼ぶ安全運転支援システムや技術の拡充を優先してきた。新システムを通じて顧客の声を分析し、「安心・安全」を重視する消費者のニーズを探る。
日本では20年4月の道路交通法改正でレベル3車両の公道での運転が可能となった。22年をめどに過疎地でのレベル4の運行を可能にするなど警察庁が法改正の準備を進めている。世界でもトップレベルの公道での自動運転環境を整え、技術も含めて官民挙げて普及に取り組んでいる。
調査会社の富士キメラ総研(東京・中央)はレベル3以上の車両市場が世界で30年に914万台、45年には6419万台にまで成長すると予測しており、各社の市場投入が今後も加速する見通しだ。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
この投稿は現在非表示に設定されています
(更新)