アウトドア特需に陰り アルペン、自前キャンプ場で挽回
新型コロナウイルス禍で生じたアウトドア特需の陰りが指摘される中、アルペンが需要喚起に力を入れている。顧客開拓につなげるため、ゲレンデやゴルフ場に加え、自前のキャンプ場の運営に乗り出した。今夏はいまのところ3年ぶりに行動制限がなく、テーマパークなどへの人出は衰えていない。自前キャンプ場を通じて市場拡大をけん引したい考えだ。

7月9日、岐阜県郡上市にあるアルペンのリゾート内で「アルペンアウトドアーズ しろとりフィールド」が本格開業した。標高1100mほどにある見晴らしの良いテラスなどが特徴だ。
キャンプ場の広さは9952平方メートルでテントを張れる区画が計38ある。プライベートブランド(PB)をはじめ人気アウトドアメーカーのキャンプ用品を幅広く貸し出し、施設の天然温泉も入浴できるようにした。ゴンドラでの遊覧や野菜の収穫体験も提供する。
アルペンが狙うのは初心者など手軽にキャンプを楽しみたい層の開拓だ。4月下旬の試験的な開業から累計2000人弱が利用。「今年12月までに4000人の来客が目標だが、滑り出しは順調だ」(アルペン)という。再来年にかけて拡張も検討している。
コロナ禍では、「密」になりやすいコンサートなどが敬遠される一方、特需が降ってわいたのがキャンプに代表されるアウトドア業界だった。だが、右肩上がりの勢いは長く続きそうにない。
矢野経済研究所(東京・中野)によると、アパレルやテントといった用品の販売やキャンプ場の利用などを合わせた国内のアウトドア市場規模は2023年度に3174億円とピークを迎え、24年度は前年度から下落に転じる見込みだ。

理由の一つが、他のレジャー需要の回復だ。JTBが6月に消費者へのアンケートや旅行商品の販売状況などから夏休み(7月15日~8月31日)の旅行動向を予測したところ、22年の夏休み期間の国内旅行者数は7000万人と21年調査から75%増え、コロナ前の19年(7240万人)に近い水準まで回復する見通しとなった。
例えば旅行者が集まるのはテーマパークだ。JTBの調査で夏休みに気になっている目的地を複数回答で尋ねたところ、「東京ディズニーリゾート」を選んだのは回答者の12%で、前年から約4ポイント上昇した。
一方、キャンプなど「自然が楽しめる場所」は18.7%と依然高水準だが、前年から9.3ポイントの大幅な下落となった。アルペンもキャンプ市場を楽観視しておらず、「コロナ禍で急拡大した人気は落ち着き、参入で競合が増えると考えられる」とみる。
アルペンは18年、愛知県春日井市にアウトドア専門店の1号店を出店した。今年に入り大阪市や熊本市でも店舗を新設し現在、全国に21店舗を構える。今後は未出店の大都市の都心部や、地方都市を中心に進出を検討している。通気性に優れ広めの空間を確保できるテントをはじめとしたPB商品にも力を入れる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの東松義晃コンサルタントは「キャンプを新たに始めたいという人は、(コロナ禍の)この2年ほどですでに始めてしまっており、キャンプ人口が今後爆発的に増えることは考えにくい」と指摘する。その上で「100円ショップでもアウトドアグッズが売られるようになった。1人あたりの消費額も下がる見込みだ」と分析する。
アルペンのアウトドア分野の21年7月~22年3月の売上高は全体の12%だった。今後、同社の経営全体を支える柱に育つのかどうか、今年の夏はそれを決定づける正念場になるかもしれない。

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