トヨタ、4~12月純利益6割増 通期生産計画6%引き下げ
トヨタ自動車が9日発表した2021年4~12月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比58%増の2兆3162億円だった。同期間では17年の2兆131億円(当時は米国会計基準)を超え、4年ぶりに最高。為替の円安傾向や1台あたりの採算改善が後押しした。一方、足元の部品不足が響き、22年3月期通期のトヨタ・レクサスブランドの世界生産計画は、850万台と前回見通しから6%(50万台)引き下げた。

22年3月期通期の純利益予想は据え置き、売上高を前期比8%増の29兆5千億円と、従来予想より5千億円減額した。見直し後の通期のトヨタ・レクサスの世界生産計画は、コロナ禍前の19年3月期(893万台)から5%少ない。
4~12月期の売上高は前年同期比19%増の23兆2670億円だった。営業利益は68%増の2兆5318億円で、アナリスト予想の平均にあたるQUICKコンセンサス(2兆4855億円)を上回った。新型コロナウイルスの影響で車業界が部品不足にあえぐ中でも、他社に比べ減産を抑えた。トヨタの担当者は同期間の最高益について「長年良い車作りに取り組んできた成果が出ている」と話した。
ただ、10~12月期でみれば純利益は6%減の7917億円だった。コロナ禍当初の減産分を取り返すため、大幅増産をした前年同期に比べると、営業損益の段階から減益となった。
4~12月期の営業利益を前年同期と比べると1兆239億円増えた。販売台数を積み上げ車種構成で好採算の多目的スポーツ車(SUV)の比率が高まり、8750億円押し上げた。期中平均の為替レートが1ドル=111円と、5円ほど円安・ドル高に進み、その他の通貨を含めた為替要因で4450億円の増益となった。結果、原材料費の増加によるマイナス分(3650億円)を吸収した。
世界販売台数(日野自動車、ダイハツ工業を含む)は8%増の778万台。北米や中国で「RAV4」といったSUVの販売が好調だった。国内でもSUVのほか、小型車「ヤリス」、ミニバン「アルファード」の売れ行きが良かった。
自動車業界では半導体不足による減産が続く一方、トヨタは系列サプライヤーを含めた幅広い供給網を駆使して、競合に比べて影響を抑えた。トヨタの10~12月の販売台数は11%減の252万台だった。ただし同期間の独フォルクスワーゲン(VW)は193万台、米ゼネラル・モーターズ(GM)は147万台と、ともに3割減っていた。

21年の暦年でみると、トヨタは世界各地のシェアも高めた。米国では販売台数がGMを抜き初の首位となり、シェアは15.5%と20年から1ポイント上昇した。国内や欧州、中国でもそれぞれ0.3~0.7ポイント上がった。各社の生産が落ち込む中で、トヨタ車の性能に対する評価や、他社製より中古車の下取り価格が高い点が追い風となっている。
22年3月期通期は営業利益も据え置いた。営業利益は27%増の2兆8千億円、純利益は11%増の2兆4900億円を見込む。
純利益は4~12月期を終えた時点で、通期予想の9割に達している。ただしトヨタの担当者は「1~3月期は資材価格の上昇がさらに負担となり、デジタルトランスフォーメーション(DX)や(実験都市の)ウーブン・シティといった新規事業への投資が膨らむ」と説明した。原材料高も年間で利益を6300億円押し下げるとも明かした。
原材料高の内訳では、鉄が最も大きく、アルミをはじめとした非鉄金属や樹脂も一定の影響を与える。コンテナ船の運賃上昇で原材料を輸入したり、自動車を輸出したりする際の輸送費もかさむ。トヨタの担当者は「これまでは年2千億円程度の費用増が最高水準で、6千億円以上は過去にないレベルだ」と嘆く。
好調な決算を受け、株価は発表直後に一時前日比3%高となった。トヨタの純利益は21年3月期に上場する製造業の合計額の1割以上を占めた。業績の動向が日本経済に与える影響は大きい。
半導体や他の部品の不足で、1月以降は国内工場の一部が稼働停止を迫られた。業績は好調なものの、新型コロナの影響で1~3月の生産は不安定さを増している。
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