名古屋で自転車シェア激戦 SB系進出、サービスに磨き

ソフトバンク系のオープンストリート(東京・港)は12月にも名古屋市内で自転車シェアを始める。自転車シェアは新型コロナウイルス対策で「3密」を避ける移動手段としても注目され利用者を増やしてきた。すでに3社が運営している。同社の進出で名古屋は全国屈指の激戦区となり、料金やサービスの競争が激しくなる可能性もある。
オープンストリートはソフトバンクの社内起業制度から2016年に創業し、21都府県に電動自転車シェア「ハローサイクリング」を広げてきた。名古屋では地域電力「たじみ電力」のエネファント(岐阜県多治見市)と組んで事業を展開する。

料金は15分70円で、12時間の最大料金は1000円。利用者はスマートフォンにアプリをダウンロードして、鍵を開ける仕組み。貸出場所20カ所、100台から始め、22~23年に市内で約1千台を目指す。
多治見市ではすでに10月から14カ所約50台で自転車シェアを始めた。同市ではトヨタ自動車の超小型EV「C+pod(シーポッド)」のシェアリングサービスも展開。充電は貸出場所に設けた太陽光パネルから供給する。

名古屋市中心部のシェアサイクルは、栄の商店街が中心になって運営する「でらチャリ」、名鉄協商(名古屋市)の「カリテコバイク」に加え、20年にはIT企業のニュート(東京・千代田)が「チャリチャリ」として参入した。
名古屋は道路が広く平地が続き、自転車で移動しやすい。一定の人口規模があるものの、東京や大阪に比べて中心部がコンパクトで短距離移動のニーズが見込める。さらにコロナ禍で3密を避ける移動手段として、シェアサイクルには追い風が吹いている。
国内外の自転車事情に詳しい慶応義塾大学の駒形哲哉教授(産業論)は「名古屋は国内屈指の激戦区として、今後の自転車シェア市場の行方を占う地域になる」と話す。料金やサービス、利便性が利用者に比較され、競争力が試される。
名古屋市も自転車シェア事業者をバックアップしている。20年には市有地を貸出場所用に無償で提供し始め、現在では名古屋城や市役所、金山駅をはじめ4か所が利用されている。19年の国土交通省の調査によると、名古屋市は放置自転車が全国の市区町村で最も多かった。自転車シェアは放置対策としても期待できる。
需要は旺盛だ。カリテコバイクの10月の1日平均利用回数が470回と1年前から3倍に増えた。ニュートは名古屋市の貸出場所を11月末には5月時点から5割増の100カ所に広げる方針だ。堅調な需要を背景に、5月には料金を1分4円から6円に引き上げた。
ただ、駒形教授は「東京では事業者同士で地域のすみ分けがある程度できているが、名古屋は狭いエリアでの勝負で事業リスクもある」と指摘する。名鉄協商は投資が先行し依然としてカリテコバイク事業で赤字が続くという。オープンストリートの名古屋進出で、今後各社はサービスに磨きをかけると同時に、収益力を高める工夫も求められる。
(田崎陸)
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