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立体駐車場 相次ぐCO2中毒、消火装置の点検・操作甘く

ビルにある機械式の立体駐車場内で二酸化炭素(CO2)中毒が相次いでいる。いずれもCO2を噴出する消火装置の老朽化や誤操作が事故を招いた。都市部などで広く普及しているが、消防法が義務付けた点検を数十年間実施しない例もあるという。「一歩間違えれば命に関わる」。消防関係者らは管理者などに設備の保守点検と操作手順の徹底を強く求めている。

ホテルの機械式立体駐車場を点検する消防職員(15日、名古屋市)

「駐車場から白煙が出ている」。2020年12月、名古屋市の繁華街、錦3地区にある10階建てホテルの従業員から119番が入った。機械式駐車場の消火装置が突然作動し、内部に消火用ガスが充満した。高層階で昇降機の部品交換をしていた男性作業員がCO2中毒で死亡。ホテル従業員ら計10人も体調不良を訴えた。

消火装置は「不活性ガス消火設備」と呼ばれ、大量のCO2で空間内の酸素濃度を下げて火の燃え広がりを食い止める。煙や熱を感知するか、作動ボタンを押すかすれば、周辺に退避を促す音声が流れ、20秒以上遅れてガスが噴き出す仕組みだった。

愛知県警によると、当時、火災は発生していなかったが、別の作業員が駐車場入り口付近にあった作動ボタンを誤って押したとみられる。男性作業員は地下の脱出口までたどり着けず、狭いスペースでガスを大量に吸い込んだ可能性があるという。

21年1月には東京都港区のオフィスビルでも機械式駐車場内の消火装置を点検中の作業員2人がCO2中毒で死亡した。警視庁はボンベの弁が何らかの原因で破損し、ガスが漏れ出したとみている。

東京理科大火災科学研究センターの小林恭一教授によると、CO2は戦前から消火剤として利用されてきた。自動車のガソリンが引火した炎の消火に効果的で、機械式駐車場が都市部で広がった1960年代からCO2を活用した消火装置も普及し始めた。

液体で保管するため、気体を多数のボンベに収めておかねばならない窒素よりも取り扱いやすく、CO2の装置が浸透し続けた。各地の消防当局によると、2月1日時点で東京都内の約3580施設、大阪市内は約1620施設、名古屋市内では約780施設にそれぞれ設置されている。

消防法は建物の管理者に対し、消防設備士などによる半年に1回の機器点検と年1回の総合点検を義務付けており、違反すれば30万円以下の罰金などが科される。

一般に装置のCO2を貯蔵するボンベの耐用年数は20年弱とされる。既に交換が必要な時期を過ぎたものが少なくないとみられるが、保守管理の意識は十分とは言えない。

「30年以上、点検を怠り続けた施設もあった。古い建物は耐震補強など他の設備の更新に費用がかさむため、1回当たり10万円以上の点検費用を惜しむケースは少なくない」(消防関係者)という。

錦3地区の事故を受け、名古屋市消防局は約400施設に職員を派遣。装置の作業手順などを説明し、安全対策の徹底を促した。

豊橋技術科学大の中村祐二教授(火災物理科学)は「行政などは駐車場内で作業する業者らが適切な操作方法を定期的に学べる講習などの場を設ける必要がある」と指摘。「迅速に火災を止められる装置を安全に機能させられるよう、点検や交換への補助金支給なども検討してよいのではないか」と提言している。(植田寛之)

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