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函館市、キングサーモンを名産に 道南で養殖挑戦相次ぐ

北海道の道南地区で、サーモンを養殖し新たな名産に育てようとする動きが熱を帯びている。函館市は国内初となるキングサーモンの完全養殖技術の確立に挑む。八雲町や木古内町はトラウトサーモン(ニジマス)養殖を進める。名産のスルメイカやサケの不漁が続き、輸入品の価格も高騰している。「育てる漁業」への転換とブランド化を通じ、基幹の水産業の安定化を急ぐ。

函館市が事業化を目指すのは、マスノスケとして知られるキングサーモンの養殖だ。脂分が多く、すしや刺し身などで人気が高いため値崩れが少なく、高値で取引される。現在は市の国際水産・海洋総合研究センターの水槽で約260尾(稚魚、成魚合計)を飼育している。成魚からの精子採取に成功しており、成熟した卵を確保した後に受精し、人工ふ化後に稚魚の育成を本格化する。

人工ふ化・飼育の次の段階として、函館近郊の大森浜沖合1.5キロメートルに10メートル四方のいけすを設置する。海温や海流の動き、周辺生物への影響から大森浜沖を選んだ。いけすは深さが調整可能で、育成に適した水温の深さに設置することができる。まず今秋にもサクラマスで実験的に養殖を始め、いけすの耐久性や周辺に与える影響などを調査する。

サクラマスの生育状況を分析したうえで2024年秋にも国際水産・海洋総合研究センターの水槽で飼育していたキングサーモンをいけすに移す。養殖を始めるのは重さが500グラム以上に育ったものを考えている。エサも地元で採れるコンブなどを使う予定で、廃棄物が少なくなるようにする。SDGs(持続可能な開発目標)を意識した事業化を進める。

早ければ25年夏にキングサーモンの成魚を水揚げする計画だ。味や品質などを踏まえ市場性や価格を割り出し、函館市内の飲食店やホテルなどの一部で販売を開始する予定だ。市場や消費者の反応などをみながら、事業化やブランド化につなげていく。

内浦湾(噴火湾)と日本海の両側で、トラウトサーモンの海面での養殖試験に着手したのは八雲町だ。北海道南西部の町村や漁協に呼びかけて昨年8月に連携組織を発足させ、「北海道二海サーモン」としてブランド化を目指す。今春の水揚げ量は約11.8トンと、昨年6月の水揚げに比べ約2.8倍に増えた。北海道内のスーパーなどで販売したほか、ふるさと納税の返礼品に充てる。

トラウトサーモンはすしネタや刺し身で人気が高い。現在国内で消費される大半はチリなどからの輸入品だ。国産への切り替え需要を取り込み独自ブランドに育てていく。

津軽海峡に面した木古内町は、今秋からトラウトサーモンの海面養殖実験を始める。地元の上磯郡漁業協同組合(知内町)、「三印 三浦水産」(函館市)と連携協力協定を結んだ。

10月にも同漁協が木古内漁港内のいけすに約1000尾を投入する。23年6月に水揚げし、生存率や生育状況を調べる。研究や実験成果から飼育ノウハウや販売価格などを検証する。数年内に、漁港外の沖合で本格的な海面養殖を展開したい考えだ。

北海道ではサケの来遊や漁獲量が低迷している。一方で全国では養殖が年々拡大している。水産研究・教育機構(横浜市)の今井智主任研究員によると、国内のサケ・マス養殖は15年末時点で全国56カ所だったが、22年4月時点で約100カ所と倍増した。北海道は15年末に1カ所だったが8カ所にまで増えた。サケの本場北海道が、味だけでなく環境配慮などの付加価値向上を通じて、養殖でも存在感を発揮できるかが試される。

(佐々木聖)

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