札幌ラーメンに不動の黒子 西山製麺はシェア3割

西山製麺(札幌市)が開発した簡単には伸びない麺が札幌ラーメンに浸透し始めている。ラーメン宅配の最大のネックを解消し、中小も多い札幌のラーメン店から支持を受ける。推定シェア3割の同社は、札幌ラーメンの不動の黒子。ラーメン店と二人三脚の成長モデルを築いてきた。
札幌市内で4店舗を経営する満龍は2021年3月から始めた宅配メニューに入れていなかったラーメンを、21年5月に追加した。「通常の麺は硬めにゆでても5分ほどでのびてしまうが、宅配専用麺なら最低40分はもつ。正直びっくりした」。この道31年の石川直志社長も驚きを隠せない。
満龍は売上高こそ新型コロナウイルス禍前の6割程度にとどまるが、3分の1を宅配で稼ぐ。店内で使用する麺も西山製麺オリジナル。スープすらコシが強い西山製麺の麺に合わせて開発しているといい、石川社長は「『もっとコシを強くしてほしい』といった細かな注文にも応えてくれる。他では代えがきかない」と全幅の信頼を寄せる。

宅配専用麺は麺の弾性と粘りを知り尽くした西山製麺が総力を挙げ、水との配合も考え抜いて20年に製品化した。もともと店舗に合わせたオーダーメード麺は同社のお家芸。店の要望に応じて少しずつ硬さや太さを変え、業務用のラーメン向け麺のラインアップは400種類を超えている。
西山隆司社長は「顧客から要望があれば200食程度の少ない量でも店に合わせた麺を卸す」と自信を見せる。同社によると、札幌市内にはラーメン店が1000軒以上あり、うち30%以上の店舗に麺を販売している。今や全国ブランドに成長した札幌ラーメンの創成期から二人三脚で歩んできた自負は強い。
定番のみそラーメンは1950年代に「味の三平」(札幌市)で生まれたといわれる。この時みそ味のスープに合うよう、水分量が多くコシが強い卵入りの麺を開発したのが西山製麺だった。市内のラーメン店も次々に追随し、多くの店舗が西山製麺から麺を仕入れるようになった。

コロナ禍で落ち込んだ20年を機に、スーパーなどで販売する家庭向けラーメンにも本格的にカジを切った。「すみれ」や「利尻らーめん味楽」といった有名店の味を再現。21年の売上高(34億円)がコロナ感染拡大前の19年(33億円)を上回る原動力となっただけでなく、ライセンス料としてラーメン店にも還元している。
西山社長が次に狙うのは海外市場。1980年代半ばから香港やハワイの北海道物産展に出展し、マーケティングの場数は踏んできた。欧州を中心に33カ国・地域で麺を販売しており、米国やドイツには現地法人も設立。19年の売上高は15%を海外が占めた。
これまでは国内製造の麺を輸出してきたが、低価格帯の商品を中心に海外生産も検討する。「物流の逼迫で日本から全て輸出する方式のリスクも感じた。シェアを拡大したい」と西山社長。海外でも欠かせない黒子となるべく、足場を固める日々だ。
(井田正利)

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