埼玉県の21年度予算案、過去最高の2兆1000億円

埼玉県は12日、一般会計総額2兆1198億円の2021年度予算案を発表した。20年度当初に比べて8%増加し、過去最高となった。新型コロナウイルス対策に重点配分したほか、社会保障費も膨らんだ。コロナ禍で税収が減り、基金取り崩しで財源を確保するなど財政は厳しさを増している。
大野元裕知事は同日の記者会見で「当面は新型コロナ対策を優先しながら、日本一暮らしやすい埼玉県の実現を目指して一歩一歩対応していきたい」と強調。感染防止と経済の両立、庁内業務のデジタル化に力を入れる姿勢を示した。予算案は19日開会予定の2月定例県議会に提案する。
新型コロナ対策費には約1110億円を計上した。専用病床の安定的な確保を最優先課題に掲げ、患者を受け入れる医療機関への協力金や重症病床の整備助成費用を積み増した。ワクチンの接種体制や予約サイトの構築にかかる経費、コロナ禍で経営が悪化した病院への経営支援にかかる事業費も盛り込んだ。
デジタルトランスフォーメーション(DX)やSDGs(持続可能な開発目標)など、コロナ禍で重要性が高まった分野にも力を入れる。DX関連では32億円を計上。県庁内のテレワーク環境の整備やペーパーレス化を進めるほか、自動車税などの納税にスマートフォン決済を導入する。中小企業のデジタル化を支援する「DX推進員」を県商工会議所連合会などに配置する。
SDGs関連では社会課題の解決を目指す起業希望者への支援、県民向けアプリの構築費用などを盛り込んだ。産業振興ではデジタル技術を活用した製品開発に取り組む企業への補助、農業大学校跡地(鶴ケ島市)に先端産業を誘致する費用を計上。感染症や災害に備えた企業のBCP(事業継続計画)の策定支援にも取り組む。
バスケットボールなど4競技が県内で実施予定の東京五輪・パラリンピック関係は28億円を計上。ホストタウンやキャンプ地での新型コロナ感染防止対策費などを新たに盛り込んだ。教育分野では県立学校の授業でパソコンやタブレット端末を有効活用するためのICT(情報通信技術)支援員の配置などを進める。
社会保障関係費は26%増の5527億円。内訳に含まれる新型コロナ対策費を除いても約3%増加する見通しだ。少子高齢化が進み、介護保険給付や後期高齢者医療の関係費用が一段と膨らむ。

一方、歳入面では厳しいやりくりを迫られた。企業業績の悪化で法人2税が減少し、県税収入は7551億円と20年度当初に比べて2.6%減る見通し。地方交付税も減少したことから、臨時財政対策債の発行額を1000億円以上増やして不足分を補う。
財政調整基金など3つの基金から517億円を取り崩し、財源を確保した。財政課の担当者は「財政状況は大変厳しいが、地道に財源を確保しながら歳出の見直しを進めるしかない」と説明する。

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