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迫る人口急減、バッテリーバレーに活路 福島・いわき市

東日本大震災10年 復興のあした③

「若い人の流出に歯止めをかけないと将来いわき市の人口減少は加速する。地元経済にも大きな影響が避けられない」。福島県いわき市にバッテリー関連産業の集積を目指す「いわきバッテリーバレー推進機構」の代表理事で、いわき商工会議所の副会頭も務める庄司秀樹氏は厳しい表情で語る。

推進機構の活動の結果、福島県いわき市には水素バスなどバッテリーで走る多くの車が集まっている

いわき市の人口は現在33万6千人で東北地方では仙台市に次ぐ第2位。しかし約30年後の2050年には19万人台と現在より4割も減ってしまう(いわき市推計)。ピークの1998年のほぼ半分で戦前の水準に逆戻りする。

いわき市の成長を支えた重化学工業や電機などの輸出産業の多くは競争力を失った。東京一極集中に加え、福島県内でも新幹線で東京や仙台とつながる郡山市や福島市に人口が集まる傾向が続いている。

いわき市の地盤沈下を覆い隠したのが東日本大震災だ。東京電力福島第1原子力発電所事故で、いわき市には同じ浜通りにある市町村から2万人以上が避難した。いわき市は人口の増加と復旧や復興事業の拠点として経済が浮揚した。

震災に伴う特殊要因が徐々に薄れるなか、15年に発足したのがバッテリーバレー推進機構だ。

庄司代表理事が社長を務める東洋システムはバッテリーの性能評価の国内最大手。他にもいわき市には古河電池、都市ガスや燃料電池を手掛ける常磐共同ガス、電極材料のクレハ、非鉄の小名浜製錬などバッテリー関連の企業が多くある。推進機構には現在40余りの企業団体が加盟する。

加盟企業が率先して水素で走る燃料電池車(FCV)を購入したことで、市内のFCVの保有数は50台近くになった。バス会社の新常磐交通は20年春、東北初の燃料電池バスの運行をはじめた。

水素ステーションの増設や燃料電池で走るトラックを導入する構想もある。

福島県内にはロボットや再生可能エネルギーの育成など様々な震災復興事業があるが、その多くは国や県が主導する。

一方、バッテリーバレー構想は民間企業が中心だ。自由闊達さがある半面、様々な規制への対応やインフラ整備などの面で限界があることも指摘されてきた。

しかしここに来て国、県の復興事業との歯車がかみ合い始めた。菅義偉首相は再生エネ普及のため大型風力発電の建設を促進する方針を打ち出した。風力発電は発電量が天候に左右されるため蓄電池を併設する必要性が高い。

国土交通省はいわき市の小名浜港を「カーボンニュートラルポート」と位置づけ環境に配慮した港湾機能の強化を進める方針だ。さらに政府は電力の全てを再生エネで賄う工業団地を浜通りに開設する方針を打ち出した。

庄司代表理事は「国のインフラ整備が動き出せばインパクトは大きい」と期待する。時代の追い風に乗り、人口急減に歯止めをかける活路を開けるのか。今後数年が正念場となりそうだ。

(郡山支局長 村田和彦)

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