広がる「リモート就職」 新人サポートへ一部軌道修正も
テレワーク 深化の条件(上)
新型コロナウイルスの感染拡大で広がったテレワークをさらに深める動きが広がる。IT(情報技術)関連業種を中心に採用後もテレワーク原則の就業とし、本社オフィスをなくす「フルリモート」の企業も相次ぐ。課題として浮かび上がった、新入社員の教育や企業としての一体感向上のため「つながり」を維持する仕組みも作り上げようとしている。
中古サーバー販売のゲットイット(東京・中央)は2020年6月以降、バングラデシュのソフトエンジニア4人を採用した。商品の出荷管理など、社内システムの整備が仕事だがコロナ禍で来日がかなわない。首都ダッカでテレビ会議を活用しながら、テレワークで仕事をこなす。川澄領・広報担当は「国内でソフトウエアエンジニアは人材不足だ。バングラデシュはエンジニアの高度人材を採れる」と話す。

IT関連の業種は端末とインターネット環境を確保すれば、場所を選ばず仕事を続けられテレワークになじみやすい。マイナビHRリサーチ部は「求人でテレワークを認めると応募者が多く集まる傾向がある」と指摘する。一歩進んだ「リモート就職」であれば、従業員の居住地に制約を受けず優秀な人材を採用しやすい利点もある。
請求書処理効率化ソフトのオートメーションラボ(東京・千代田)は採用から就業までテレビ会議によるフルリモートで行っている。従業員はいずれも中途採用で、テレビ会議の共有画面で表計算ソフトを扱わせるなどして、スキルを判断する。従業員の居住地はタイ、沖縄、高知、長野各県など国内外に広がる。村山毅社長は「出社の必要がないので、全国から優秀な人材を集めやすい」と利点を強調する。
東京都立川市のIT企業32社は長野県茅野市と連携し、同市在住の大学生を採用し、仕事は引き続き同市在住でテレワークで行ってもらうリモート就職を進める。
採用面などでは利点の多いテレワークだが、非対面ならではの誤算もある。アイティオール(東京・港)は、固定、携帯電話を内線電話のように使えるサービスを提供する。20年4月にサービスの問い合わせ担当としてテレワークで就業させた大阪府在住の男性は2カ月で退職した。入社時に1回目の緊急事態宣言が重なりサービスの申し込みが殺到。「平時ならリモートでも新人をサポートできただろうが、社内が混乱しうまくできなかった」(鹿島雄介社長)

入社1年目の従業員にテレワークは難しいとわかり方針を転換。その後入社した従業員は本社勤務とし教育係をつけて十分な研修を行うことにし、フルのテレワークを認めるのは同社で1年以上の勤務経験がある従業員に限定した。
ゲットイットはバングラデシュのリモート就職直後、対面であれば通常1週間で済む研修に、テレワークでは1カ月以上かかることに気づいた。日本人従業員と直接交流ができず会社にもなじめないでいた。
このため、毎日テレビ会議で雑談をした日本人従業員の人数を申告させるようにし、気軽に話せるよう英語力のある日本人従業員の名前も伝えた。「双方向のコミュニケーションを図ってくれたことはありがたかった」(ダッカ在住のタンズィド氏)。川澄氏は「フルリモートでは人間関係確保の工夫も必要だ」と説明している。

新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行しました。関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。
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