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コロナワクチンの低温輸送、スタートアップも参画

ドライアイスで冷やされた新型コロナワクチン(2020年12月4日)=ロイター
CBINSIGHTS
新型コロナウイルスのワクチンを配送するため、低温輸送を担う企業に注目が集まる。スタートアップ勢ではアイスランドのコントローラント(Controlant)や米ベリクール(Vericool)がワクチン輸送に参入した。CBインサイツが現状をまとめた。

コールドチェーン(低温輸送網)とは温度変化に敏感な製品の状態を製造や保管、輸送の間も守るために使われる一連のテクノロジーとプロセスを指す。コールドチェーンは製薬、化学、食品・飲料業界で重要な役割を担っており、新型コロナウイルスのワクチンを安全に流通させるために欠かせない。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

温度を保ち、IoT技術を通じてリアルタイムでデータを提供し、人工知能(AI)で機敏に対応することができる。企業はこれを活用することでサプライチェーン(供給網)のリスクを最小限に抑えられる。

CBインサイツの業界アナリストの推計ではコールドチェーンシステムの総需要は2860億ドルに上り、年19.5%のペースで伸びている。

コールドチェーンの構成要素

コールドチェーンは3つの中核要素から成る。1つ目は梱包や輸送コンテナ内の製品の温度を調整する技術で、2つ目は製品や梱包材と接続するIoTセンサーだ。これはバーコードの場合もある。センサーは製品の状況についてリアルタイムのデータを提供する。3つ目はコールドチェーンでの製品状況のデータを提供し、リスクやギャップを検知する可視化プラットフォームだ。

バイオ製薬会社向けコールドチェーンの構成要素

これらの要素を組み合わせたサービスを提供しているベンダーもある。米テンパーパック(TemperPack)は包装材だけを手掛けるが、アイスランドのコントローラント(Controlant)はIoTセンサーと可視化プラットフォームの両方を提供している。 

コールドチェーンで何を輸送できるのか

コールドチェーン技術は食品・飲料、化学製品、医薬品、ワクチンの安全な輸送で大きな役割を担っている。

食品・飲料

傷みやすい食品・飲料の輸送には温度管理が不可欠だ。コールドチェーンが寸断すれば細菌が増殖したり、製品が賞味期限の前に悪くなったりする可能性がある。

資金調達総額が2500万ドルを超える米ベリクール(Vericool)は生鮮品や食品の宅配専用の梱包材を手掛ける。生鮮食品のマイクロフルフィルメント(小型受注配送システム)が台頭しているため、コールドチェーンはこの分野でさらに重要な役割を担うようになるだろう。

化学製品、石油・ガス

多くの化学製品は放出された熱で発火したり爆発したりする発熱反応の影響を受けやすい。このため、この分野の安全な輸送にはコールドチェーンが欠かせない。

この分野は米インフォア(Infor)など既存大手が支配している。同社は化学製品や石油・ガス分野の顧客に応じたコールドチェーンサービスを提供する。

医薬品、ワクチン

医薬品とワクチンは適切な温度で保管しなければ効果が損なわれ、有害になる可能性もある。このため大半のコールドチェーンシステムがバイオ製薬業界にサービスを提供している。

コントローラントはファイザーが新型コロナワクチンを世界各国に供給する際にリアルタイムの温度監視システムを提供する。

バイオ製薬会社向けコールドチェーン

CBインサイツの業界アナリストによるコロナ前の予想では、2021年のバイオ製薬会社向けコールドチェーン物流の市場規模は166億ドルだった。

新型コロナのパンデミック(世界的大流行)を受け、この市場は拡大する可能性が高い。ワクチンは常に氷点下の低温で保管し、輸送しなくてはならないからだ。ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンは約マイナス70度、米バイオ製薬大手モデルナ製のワクチンはマイナス20度で保管する必要がある。

コールドチェーンが必要なのはワクチンだけではない。最近のデータでは米食品医薬品局(FDA)が17年に承認した医薬品の半数近くがコールドチェーン製品だったことが示されている。生体や生体成分に由来するバイオ医薬品が増えているため、温度管理や監視システムにさらに注目が集まっている。適切な温度を維持できなければ健康被害につながる恐れがあり、コールドチェーンが寸断すれば多額の金銭的損失を被る可能性がある。

バイオ医薬品のコールドチェーンでは新興テクノロジーのうち、機敏性と追跡精度を高められるIoTとAIの利用が増えている。主な利用事例は以下の通りだ。

・リアルタイムで需要に対応する原材料の調達スケジュール管理システム

・輸送時の温度リスクを見つけ出す異常検知

・薬局での医薬品フルフィルメント(受注配送)用の自律走行ロボット

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