三越伊勢丹HD社長に細谷氏 デジタル対応急務

三越伊勢丹ホールディングスは26日、子会社の岩田屋三越(福岡市)の細谷敏幸社長(56)が4月1日付で社長に就く人事を発表した。杉江俊彦社長(60)は代表権のない取締役に退く。細谷氏は構造改革で地方百貨店を再生した実績がある。新型コロナウイルス下で業績が悪化するなか、ネットと実店舗を融合したデジタル化に挑む。
「百貨店のビジネスモデルはもう消費者から受け入れられないのではないか」。同日、オンライン会見で細谷氏は危機感を示した。三越伊勢丹の2021年3月期の最終損益は450億円の赤字となる見通し。新型コロナによる外出自粛が響いたほか、収益のけん引役だった訪日客需要の回復も見通せない。
テナントビルへの転換など競合他社が脱・百貨店を進めるなか、三越伊勢丹は売上高に占める百貨店の比率が9割前後と比重が高く、事業基盤が大きく揺らいでいる。
三越伊勢丹は2017年に新規事業開発に力を入れていた大西洋前社長に対して労働組合が辞任を要求。経営の混乱の中で、労組に支持された杉江氏が社長に就いた。杉江氏は新潟三越(新潟市)や都心部の三越恵比寿店(東京・渋谷)など不採算店を閉めるなど構造改革を進め、一定の成果が出てきたところを新型コロナが直撃した。
再浮上のカギを握るのがネットとの融合だ。ネット通販の全体に占める割合はわずか1割に満たない。20年11月から旗艦店の伊勢丹新宿店(東京・新宿)などの全商品をネットで接客して販売する新たな取り組みを始めた。細谷氏は「全てのお客様とデジタルでつながり、いろんな提案をしていきたい」と意気込む。
足元ではデジタルへの先行投資の段階で、利益貢献がまだ低く、財務面に不安が残る。資金を確保しながら新規事業を育成できるか。細谷氏は難しいかじ取りを迫られている。