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再エネテック争奪戦 トップ投資家は英蘭シェル系VC

ロイヤル・ダッチ・シェル傘下のシェル・ベンチャーズは再生エネ分野に活発に投資している
CBINSIGHTS
再生エネルギーへの関心が高まるなか、関連するテクノロジー企業への投資も急増している。最大の投資家は英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル傘下のベンチャーキャピタル(VC)だ。エネルギー業界のライバル各社も投資を進め、発電や電気自動車(EV)が主な投資先となっている。

世界で再生可能エネルギーを利用した発電が増えている。2020年は前年比7%増えたもようだ。消費者も自宅の電源構成への関心を強めている。米調査会社エスカレントによると、天然ガスや石炭などの化石燃料よりも再生エネによる発電の方が好ましいと考えている米国民は40%を超える。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

投資家もこのうねりを認識している。世界的なVCや大企業のコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)は、インフラや発電、蓄電、エネルギー管理ソフトなど再生エネのエコシステム(生態系)にイノベーション(技術革新)をもたらすスタートアップに投資し続けている。

20年1月~12月8日の再生エネルギー企業への投資件数は527件で、19年通年から13%増えた。このペースに基づけば、20年通年の投資件数は過去5年間で最も高い水準に達する。

再生エネ投資、20年も拡大 16年~20年12月8日のエクイティ投資(株式取得・引き受けを伴う投資)件数と投資額(公表ベース、100万ドル)

今回のリポートでは、16年以降に再生エネ分野に10件以上投資している「トップ投資家」14社の動向に注目する。14社のリストは記事の最後に掲載した。

再生エネ分野のトップ投資家

再生エネ分野に最も活発に投資しているのは、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル傘下のシェル・ベンチャーズ、蘭EITイノエナジー、米エナジー・インパクト・パートナーズ(EIP)だ。3社はサステナビリティー(持続可能性)に特化したVCと、エネルギー会社や事業会社のCVCというトップ投資家の典型だ。

再生エネテックのトップ投資家 (16年~20年12月8日の投資件数)

シェル・ベンチャーズはロイヤル・ダッチ・シェルの脱炭素化計画で不可欠な役割を担っている。エネルギー業界のライバル各社も再生エネやモビリティーなど関連テクノロジーへの投資を進めている。

サステナビリティーに脚光が当たるなか、シェル・ベンチャーズは素早く戦略的に投資し、親会社を補強するスタートアップを買収できる。18年には独蓄電池メーカー、ゾンネン(sonnen)のシリーズEに単独で出資した。ロイヤル・ダッチ・シェルは結局、19年にゾンネンを買収した。

EITイノエナジーはエネルギー分野の技術革新に投資する欧州のファンドだ。再生エネのエコシステムを強化するスタートアップの支援に取り組んでおり、CBインサイツのデータによると、過去5年の投資件数の8割以上を初期段階のスタートアップが占めている。20年には屋根一体型の太陽光発電システムを手掛けるスウェーデンのサンルーフ(SunRoof)のシードVCラウンドに参加。19年にはブロックチェーンを活用したエネルギー管理システムを手掛けるスペインのフレキシダオ(Flexidao)のシリーズAに加わった。

同様に、EIPはクリーンエネルギーの推進を支える技術に特化している。同社は米電力大手のアビスタやデューク・エナジー、エバジーなどエネルギー会社や事業会社と共同でクリーンテックに投資している。米マイクロソフトは20年初めに「気候イノベーション・ファンド」の創設を発表し、20年半ばにEIPの提携網に加わった。

EIPは家庭の電力使用をモニタリングする米センス・ラブズ(Sense Labs)に過去5年で3回出資している(シリーズA、B、C)。センス・ラブズは調達資金を陣容拡大や製品の改善に充てたほか、最近は製品に修理点検の通知や自動節電などの機能を追加している。

主な投資分野

再生エネのトップ投資家はいずれも、急速に発展しつつある発電やEVの充電網の拡大など再生エネの導入を推進する技術を持つ企業に投資している。

再生エネテックのトップ投資家の主な投資分野 円の大きさはトップ投資家による企業への投資件数に比例 (注)「Other(その他)」カテゴリーは二酸化炭素回収技術やドローンの監視など再生エネの利用拡大に関連する技術を含む

トップ投資家14社が16年以降に投資した企業は計104社に上るが、ほとんどの企業はトップ投資家から1回しか出資を受けていない。分散投資もその一因だが、むしろ二酸化炭素(CO2)排出量の削減やクリーンエネルギーへの移行に必要な再生エネ、インフラ、ソフトの技術革新がいかに多岐にわたっているかを示している。 

・発電

再生エネテックのトップ投資家の主な投資分野(インフラ、発電、エネルギー管理ソフト、蓄電、その他)のうち、出資を受けた企業が最も多いのは発電を手掛ける企業の35社だった。発電プロジェクト開発大手は太陽光発電や風力発電の発電容量を急拡大しているが、スタートアップは身近にあるエネルギー源を活用して発電する新たな手法を編み出している。

この分野のバイオ燃料スタートアップはトップ投資家から複数回にわたって資金を調達している。例えば、ごみからメタノールやエタノールを生成するカナダのエネルケム(Enerkem)はここ3年、シリーズGで2億2400万ドル、シリーズHで5700万ドルの調達を果たした。両ラウンドにはトップ投資家の米ブレーマー・エナジー・ベンチャーズが参加した。バイオ燃料生成の米フルクラム・バイオエナジー(Fulcrum BioEnergy)は過去5年間に実施した複数回のラウンド(ステージ不明)で計9500万ドルを調達した。米BPベンチャーも同社に出資している。

太陽と同じ「核融合」によるエネルギー利用を目指すスタートアップは20年に多額の資金を調達した。米コモンウェルス・フュージョン・システムズ(Commonwealth Fusion Systems)は20年5月、シリーズAで米ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズなどから8400万ドルを集めた。核融合技術はまだ研究初期の段階で実用化には数年かかるが、投資家はこうした画期的な解決策の実用化に期待して資金を投じている。

・エネルギー管理ソフト

トップ投資家の5つの主な投資分野のうち、投資件数が最も多いのはエネルギー管理ソフトだった。この分野では29社が出資を受けている。

米オートグリッド・システムズ(AutoGrid Systems)は電力供給、発電、蓄電を対象にしたエネルギー管理ソフトを手掛けている。同社の仮想発電システムは人工知能(AI)を活用して運営を最適化し、エネルギー需要や停電の可能性を予測する。オートグリッドはここ数年、シリーズCで2000万ドル、シリーズDで3200万ドルを調達し、出資を受けている電力会社の多くと緊密に連携して用途拡大に取り組んでいる。オートグリッドは20年、米サンラン(Sunrun)と提携し、サンランの家庭用太陽光発電とバッテリーシステムの管理を担うと発表した。

エッジコンピューティングのスタートアップ、米フォグホーン(Foghorn)は再生エネ発電所などに状態監視や最適化、予知保全ソフトを提供している。同社はトップ投資家の米GEベンチャーズから出資を受けている。

・蓄電

トップ投資家からの投資件数が2番目に多いのは蓄電を手掛ける企業だった。グリッド向け蓄電スタートアップ、米フォーム・エナジー(Form Energy)は過去4年に実施した3回のラウンド(シリーズA、B、C)でトップ投資家から資金を調達した。同社の調達総額は1億2700万ドルに上る。

トップ投資家は蓄電スタートアップ23社に出資している。最も多くの企業に投資しているのは米ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズで、投資先は米マルタ(Malta)やフォーム・エナジーなど5社に上る。

複数のトップ投資家から出資を受けているスタートアップ

3社以上のトップ投資家から出資を受けている再生エネスタートアップ

3社以上のトップ投資家から出資を受けているのは、センス・ラブズとオートグリッドの2社だった。どちらもエネルギー管理ソフトを手掛けている。これは再生エネの利用を一元化し、エネルギー効率を改善し、低炭素化を進める重要なツールだ。

両社は投資家も一部重なっている。トップ投資家のうち、投資件数が最も多いシェル・ベンチャーズと3位のEIPはここ5年、センス・ラブズとオートグリッドの複数のラウンドにそれぞれ参加している。

再生エネテックのトップ投資家14社=アルファベット順
BASFベンチャー・キャピタル(独)
BPベンチャーズ(米)
ブレーマー・エナジー・ベンチャーズ(米)
ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(米)
シェブロン・テクノロジー・ベンチャーズ(米)
EITイノエナジー(蘭)
エナジー・インパクト・パートナーズ(米)
GEベンチャーズ(米)
GMベンチャーズ(米)
プレリュード・ベンチャーズ(米)
SETベンチャーズ(オランダ)
シェル・ベンチャーズ(オランダ)
SOSV(米)
トタル・カーボン・ニュートラリティ―・ベンチャーズ(仏)

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