アジア太平洋地域で多額を調達したスタートアップ
パキスタンから中国、ニュージーランドに及ぶアジア太平洋地域に拠点を置くテックスタートアップの2020年のエクイティファイナンス(新規株式発行を伴う資金調達)の件数は5800件近く、合計調達額は900億ドル以上に上った。
中には中国のトラック配車アプリ満幇集団(Manbang Group)やインドネシアの配車大手ゴジェック、インドの通信大手リライアンス・ジオなどによる1回の調達額が10億ドルを超える巨大ラウンドも含まれる。
CBインサイツのデータを活用し、アジア太平洋のそれぞれの国・地域で最も調達額が多いテックススタートアップを抜き出した。地図に掲載した企業の調達額は合計で614億ドルに上る。
今回の分析では、エクイティファイナンスによる調達総額(公表ベース)が100万ドル以上の未上場のテック企業を対象にした。いずれもベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けており、16年以降にエクイティファイナンスによる資金調達を果たしている。地域のトップスタートアップの実態を確実に示すため、香港と台湾は中国とは別にした。

主なポイント
・アジア太平洋で調達総額が最も多いのはインドのリライアンス・ジオだった。調達総額は200億ドルを超えており、その大部分を20年に調達した。同社の20年の調達額はインドの全てのテックスタートアップによる19年の合計調達額を上回った。
・僅差で2位に付けたのは中国の金融会社アント・グループ(調達総額は191億ドル)だった。上位2社のそれぞれの調達総額は域内の他のスタートアップを大きく引き離しており、3位に入ったシンガポールの配車大手グラブ(92億ドル)の2倍以上に達した。
・地図に掲載した19社のうち、ユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)は5社だった。内訳はグラブ(企業価値143億ドル)、ゴジェック(100億ドル)、ララムーブ(香港のオンデマンド宅配、100億ドル)、クーパン(韓国のネット通販、90億ドル)、そしてエアーウォレックス(オーストラリアのフィンテック、18億ドル)だった。アント・グループは中国の電子商取引(EC)最大手アリババ集団、リライアンス・ジオはインドの通信会社ジオ・プラットフォームズとの関係から、CBインサイツの「ユニコーン」の定義を満たしていない。
・アジア太平洋の19カ国・地域に調達総額が100万ドル以上のテックスタートアップがある。そのうちの6社は調達総額が10億ドルを超えている。
・地図に掲載した企業のうち調達総額が最も少ないのは、スリランカの遠隔医療オードックだった。同社はシード(種)ラウンドで110万ドルを調達している。
企業名 国・地域/内容 | 調達総額 |
リライアンス・ジオ(Reliance Jio) インド/通信 | 200億5700万ドル |
アント・グループ(Ant Group) 中国/金融 | 191億4500万ドル |
グラブ(Grab) シンガポール/配車サービス | 91億5600万ドル |
ゴジェック(Gojek) インドネシア/配車サービス | 47億3500万ドル |
クーパン(Coupang) 韓国/EC | 38億4400万ドル |
ララムーブ(Lalamove) 香港/オンデマンド宅配 | 24億7500万ドル |
エアーウォレックス(Airwallex) オーストラリア/フィンテック | 4億200万ドル |
アイフリックス(iflix) マレーシア/動画配信サービス | 3億4800万ドル |
輝能科技(ProLogium Technology) 台湾/全固体電池メーカー | 3億4600万ドル |
モビリティテクノロジーズ(Mobility Technologies) 日本/タクシー配車アプリ | 3億2800万ドル |
モモ(MoMo) ベトナム/電子マネー | 2億3400万ドル |
フラッシュ・エクスプレス(Flash Express) タイ/物流 | 2億1000万ドル |
ソウル・マシンズ(Soul Machines) ニュージーランド/デジタルヒューマンの開発 | 5000万ドル |
ザミーン(Zameen) パキスタン/不動産情報サイト | 3100万ドル |
ファーストサークル(First Circle) フィリピン/中小企業向け融資 | 2900万ドル |
ショップアップ(ShopUp) バングラデシュ/EC | 2400万ドル |
フィンシー(Fincy) カンボジア/モバイル通信 | 1500万ドル |
オーウェイ(Oway) ミャンマー/タクシー配車サービス | 1500万ドル |
オードック(oDoc) スリランカ/遠隔医療サービス | 110万ドル |
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